連載コラム

2016/08/29

相模原事件に思う

 7月下旬、世界中の人々の心を曇らせる事件が起こりました。被害に遭われた方、ご家族のことを思うと言葉も見つかりません。「異形に対する心の壁は、慣れることでしか解消されない」、ある研究者の言葉です。彼には障害があり、社会からの差別に苦しんだといいます。人は本能的に、自分とは異なる形や姿に対し線引きをします。その「識別」は「区別」となり、時に「差別」にもなる。私は私に慣れるまで、長い時間がかかりました。車いすに乗っている自分が嫌いで、劣っていると差別していたのは他でもない私自身でした。

 今も歩きたいという思いは変わらず、自分のことを好きとも言えません。でも、嫌いではなくなりました。私の周りには変わるきっかけをくれた人たちがいた。あえて過保護ではなかった両親、対等にけんかしてくれた友、好きと言ってくれた恋人、夢に向かって共に歩む仲間。優しく向き合ってくれる人、厳しく接してくれる人と出会うことができた私は、不幸ではありませんでした。

 世界には不幸な境遇の人がいます。理由は千差万別で、すべてを解決することはできません。それでも出会ってきた人たちに与えてもらったものを力に変え、不幸を生む理由を少しでも多く取り除いていきたいと、改めて強く願います。

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