レポート

2018/01/31

もっと知りたいAI、IoT インクルーシブな未来

スマート・インクルージョン研究会 代表 竹村 和浩さん

未来を語る言葉にカタカナ語やローマ字が増えている。特に注目を集めているのは「AI(人工知能)」、「IoT(モノのインターネット)」。こうした最新技術の開発に、障害のある人の知見を生かす取り組みを推進する人がいる。テクノロジーの力で「誰もが安心・安全に暮らせる社会」の実現を目指す、スマート・インクルージョン研究会 代表 竹村和浩さんに話を聞いた。

ダウン症の娘と学んだインクルージョンの意味

竹村さんが、元・グーグル日本法人代表取締役の村上憲郎さんとともに「スマート・インクルージョン研究会」を立ち上げたのは2016年4月。同会の設立コンセプトは「障害者の視点からIoT/AIを開発することによりソーシャル・インクルージョンを実現すること」。最近よく耳にする「インクルージョン」という言葉は、日本語では「包摂(ほうせつ)」と訳されるが「日本にその概念が存在しない言葉は、そのまま使った方が世界と共通の認識を持てる」と話す竹村さん、本職は英語講師だ。

都立高校教師などを経て独立し、日本人の英語力向上に尽力する竹村さんがスマート・インクルージョンを提唱するようになったきっかけは、今年18歳になる次女・佳小里さんの存在。「ダウン症を持った次女を授かったことで、親亡き後の子どもたちの安心・安全な人生を願うようになった。AIの技術でその仕組みを実現できたら、誰にとっても精神的にも物質的にも豊かな社会になる」と活動を始め、昨年はAIを使った障害者支援のアイデアを出し合う「インクルーシブ・アイデアソン」を開催。

普段、障害当事者と接点を持たないIT企業の技術者ら約50名が参加し、5名ごとに分けたグループに、視覚、身体、知的障害などのある当事者1名が入り意見交換を行ったところ「期待以上の成果があった」と竹村さん。「旅をテーマにしたアイデアソンで、『視覚障害のある方が旅先で不便なことは何か』と話し合う中、当事者は『隠したかった自分の障害が人の役に立つことを実感できた』、技術者は『新しい気付きを得ることができた』と、双方に喜んでいただけた」。
 
竹村さんの元には、地方自治体から「行政システムとしてスマート・インクルージョンを取り入れていきたい」という依頼もある。「障害者や高齢者の支援にAIやロボットを導入するというと、冷たいイメージを持つかもしれないが、AIやIoTがガスや電気のようにインフラ化すれば、障害のある人も高齢の人も安心して『居住』と『移動』を1人で行うことができる」と、スマート・インクルージョンの構想を語る。「私たちも加齢とともに、徐々に目が不自由になり、耳も遠くなり、判断力や記憶力も衰えていく。障害を抱えて生きている人たちは、まさに高齢者の先輩」と、竹村さんは言う。「多岐にわたる障害者のニーズから技術開発を行うことで、世界に先駆けて超高齢化を迎える日本のIoT/AI技術を、最大限に高めることができると思うのです」。

●スマート・インクルージョン研究会 代表竹村 和浩さん
1961年石川県生まれ。立教大学英米文学科卒業後、都立高校英語教諭、(株)公文教育研究会を経て独立。(株)ユニバーサル・エデュケーション代表取締役として日本人の英語力向上のための活動に従事するかたわら、2016年「スマート・インクルージョン研究会」設立。公益財団法人日本ダウン症協会国際担当、アジア太平洋ダウン症連合事務局長を歴任。

用語解説
AI=Artificial Intelligence
人工知能。人間の知的営みをコンピュータに行わせるための技術、またはそれを実現するコンピュータプログラムのこと。
IoT=Internet of Things
モノのインターネット。建物、電化製品、自動車、医療機器など、あらゆるモノがインターネットを通じて接続され、モニタリングやコントロールを可能にするという概念。

 

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●お問い合わせ
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