連載コラム
2018/10/31
垣内俊哉「106cmの視点から」
多機能、多目的のちがい
海外各国を訪れましたが、日本ほど高機能なトイレが多い国は他にありません。狭い空間を最大限に活用し、おもてなし精神の溢れるきれいなトイレは、実に日本らしい文化。中でも、より多くの設備と広いスペースが設けられているのが多目的トイレですが、ハロウインの季節には、着替えや化粧のために占領され、本来使いたい人たちが困っている様子が、しばしばSNSなどで話題になってしまいます。なぜ誤った利用が増えてしまうのか。そこには「知らなかった」ことから生まれる誤解があると私は考えています。手すりは、自力で便座に移動しづらい人が掴みます。洗浄スペースは、人工膀胱・肛門を利用している人が汚物を流す時に必要です。ベッドは、横にならなければ排泄や着替えができない人が使います。トランスジェンダーの人の中には、性別に関係なく使えるので、あえて選んでいる場合もあります。このトイレは目的が多彩なのではなく、機能が多彩なのです。本当は「多目的トイレ」ではなく「多機能トイレ」です。なぜこの機能があるんだろう、一体誰が使うんだろう?という素朴な疑問を皆が持つようになれば、自ずとその使い方も変わってくるのではと思います。
●PROFILE● 垣内 俊哉
1989年生まれ。岐阜県中津川市出身。2012年立命館大学経営学部卒業。在学中2010年に株式会社ミライロ設立。