連載コラム
2019/03/12
垣内俊哉「106cmの視点から」
押し付けの先回りと 思いやりの先回り
東京へ向かう最終の新幹線。車いすを置ける席は空いておらず、デッキに車いすを畳んで置いて、伝い歩きで車両中央の座席へ。デッキに置いた車いすが乗り降りする人の邪魔になるため、こういう時は車掌さんにその旨を伝えます。「すみません、車いすをデッキに置かせてもらっています」「かしこまりました。どちらで下車されますか?」「ありがとうございます。品川で降ります」。いつもは大体これで終了ですが、この日は違いました。 「それでは、その前にお席へお持ちしますね。下車のアナウンスが3分前に流れますが、どれくらいの時間帯がご都合よろしいですか?」。下車直前は通路もデッキも混雑するため、いつも5分前には座席から車いすに乗り移り、デッキで待機します。車いすを運ぶだけではなく、私のタイミングに合わせてくれるという、車掌さんの思いやりのある先回りに、感動しました。
車いすに乗っている方が食事をする時、席にある椅子を外してしまうのは、誤った先回りになる可能性があります。床ずれや褥瘡の方は、車いすから椅子に移りたいと思っているかもしれないからです。押し付けによる先回りではなく、思いやりのある先回りが、これからの日本に、より広がっていくことを願います。
●PROFILE● 垣内 俊哉
1989年生まれ。岐阜県中津川市出身。2012年立命館大学経営学部卒業。在学中2010年に株式会社ミライロ設立。