シンポジウム
2015/12/16
第1回 シンポジウム 開催レポート
6月18日、青山学院大学 本多記念国際会議場にて
東京新聞では11月14日、時事通信ホール(東京都中央区)で「HEART & DESIGN FOR ALL」の第1回シンポジウムを開催。年齢、性別、国籍、障がいの有無などを問わず誰もが暮らしやすい社会を実現するために、ユニバーサルデザイン(以下UD)をはじめ、さまざまな視点での取り組みが紹介されました。
主催:東京新聞 協力:株式会社ミライロ、一般社団法人日本ユニバーサルマナー協会
第1部 基調講演
「ハードは変えられなくても、ハートは変えられる!」
〜ユニバーサルマナーが未来を変える〜
「大変ですね」「頑張ってくださいね」―。車いすで生活していると、よく声をかけられます。とても優しい言葉です。が、その内面には「障がい=不幸」という意識が介在しているのかもしれません。私自身、歩けない自分に絶望し、不幸だと感じたことがあります。
しかし、障がいがあったから出会えた人がいて、多くの気付きを得ました。そして、起業できました。「障がい(バリア)」が「価値(バリュー)」へと転化したのです。「バリアバリュー」という考えを実現する手段のひとつがUDです。バリアフリーは障がい者や高齢者のためのものでしたが、UDは国籍、性別、年齢、障がいの有無などを問わず誰もが使いやすいものやサービスです。
UDは社会貢献としての意義だけでなく、経済活動としての価値を持ちます。実際、車いすで入店しやすい飲食店は、多くの障がい者に支持され売上を伸ばしています。「設備投資の資金不足」を嘆く人もいるかもしれません。ハードは簡単に変えられなくても、ハートは今すぐ変えることができますよね。高齢者はどんなことで困っているのか、視覚障がい者、聴覚障がい者は?外国人は?自分とは違う相手への接し方は難しいことではなく誰もが身に付けられるマナー。無関心でなく過剰にもならない心配りを、私たちは「ユニバーサルマナー(以下UM)」と名付けました。
「障がい」とは人が持っているのでなく「環境」にあります。ハードはUDで、ハートはUMで変えることができる。高齢化先進国の日本だからこそ、真のUDUM先進国を目指すことができると思うのです。
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株式会社ミライロ 代表取締役
垣内俊哉氏
1989年愛知県生まれ。2010年立命館大学在学中に株式会社ミライロ設立。車いす目線によるビジネスアイデアでコンテスト受賞多数。全国でUDコンサルティングに尽力中。
第2部 パネルディスカッション
「誰もが暮らしやすい社会の実現へ」
進行/垣内俊哉氏
少しの配慮が新たな市場へストレスフリーの観光地へ
「誰にでも優しい沖縄」を目指して、那覇空港などで障がい者や高齢者に向けた観光案内所を運営しています。そこで見出したのが、眠っていた市場です。そのひとつが、車いすの貸出サービス。普段は杖やキャリーカートを使っていた高齢者が、空港で車いすを借りることで、観光をより楽しめるようになりました。旅は何よりのリハビリ。歩行に自信がなく旅行自体を諦めていた人にとっては沖縄旅行の動機付けにもなり、貸出件数は増加しています。
市内の案内所では一時保育のサービスを展開していますが、利用者の約40%は外国人旅行者。子どもを預けて、自由にショッピングなどを満喫しています。ちょっとした配慮で、ストレスフリーの観光地になれるのです。
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NPO法人バリアフリー
ネットワーク会議代表親川修氏
普段の接客業務の蓄積がユニバーサルサービスへ
あらゆるお客さまに安心で快適な滞在を目指した客室が、当ホテルの「ユニバーサルルーム」。車いすの移動を妨げない空間やスロープ付きのバス・トイレ、視覚障がい者向けに音声情報案内システムなどを完備しています。それらは取り外し可能なため、お客さまのニーズに応じた環境を提供しています。また、ホテル業界で初めて介助犬トイレを設置し、ユーザーの方々に喜ばれています。ホテルに泊まらなくても良いので、ぜひユーザーの方にご利用いただきたい自慢の設備です。
もちろん、ハードで全てが解決できるものではありません。普段の接客の中で、お客さまの声に寄り添うことで、お客さま一人ひとりに合わせた「ユニバーサルサービス」を実現してまいります。
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京王プラザホテル
客室支配人中村さおり氏
聞こえる人と聞こえない人をつなぐ「電話リレーサービス」
日本財団では、聴覚障がいのある方が電話をしたいときに、オペレーターが手話や文字を使って同時通訳し通話相手とつなぐ「電話リレーサービス」のモデルプロジェクトに取り組んでいます。日本には障がい者手帳を持っている耳の聞こえない方が約33万人、高齢により聞こえにくい方を含めると何百万人という方が聞こえの問題を抱えています。「電話リレーサービス」では、24時間365日聴覚障がい者が通訳費用を自己負担することなく、聞こえる人と同等に電話が利用できる制度の確立を目指しています。
誰もが暮らしやすい社会を実現するために、まずは身近な障がい者の方と一緒に行動してみましょう。どんな場面で何が不便なのかに気付くことができると思います。
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日本財団
ソーシャルイノベーション本部
福祉特別事業チーム
上席チームリーダー
石井靖乃氏
LGBT当事者を理解し支える「友人」として
青山BB(Beyond Borders)ラボは、2020年オリンピック開催を視野に「偏見も差別もない社会を目指そう」と青山学院大学の授業の一環として昨年設置されました。海外アスリートの中にはゲイやレズビアンをカムアウトしている方も多く、LGBT(性的マイノリティ)と呼ばれる人もそうでない人も、皆が居心地よく暮らせる社会を実現するために、勉強会やシンポジウムを開催しています。LGBTを理解する非当事者のことを英語で「アライ(ALLY=同盟)」といいます。私たちがこのラボを設立できたのは、カムアウトしてくれた勇気ある学生とアライとしてサポートする学生がいたから。性的マイノリティの問題は当事者を取り巻くマジョリティ、つまり私たちの問題として捉えていきたいと思っています。
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青山BBラボ代表・
青山学院大学客員教授/アグロスパシア編集長岩渕潤子氏
参加者の声
参加者アンケートより
Q. 誰もが暮らしやすい社会を実現するために、一人ひとりに大切なこととは?
心のバリアフリー/世の中には多様な人が共に暮らしていることを知ること/多様な人への対応を「ビジネス」として進めていくこと/誰でも年を取り障がいを持つこともある「関係のないことではない」という意識/困っている人に声を掛ける勇気/外見ではわからない多様性を知る…