シンポジウム
2023/09/25
シンポジウム「みんなのミカタ 〜誰もが暮らしやすい社会のために〜」レポート【後編】
第2部 日々の取材を通して思うこと
シンポジウム「みんなのミカタ 〜誰もが暮らしやすい社会のために〜」レポート【前編】はこちら
伝えることの難しさ
奥野斐記者 私はLGBTに関する取材を続けていますが、伝え方の難しさを感じています。例えば、取材対象が「当事者の代表」に見えないように気をつけています。お二方は当事者としてお話しされるとき、注意したり意識したりすることはありますか。
-
東京新聞記者 奥野 斐(おくの・あや)
2006年入社。10年頃からLGBT取材を始める。現在、ジェンダーや子どもの問題も継続して取材。
垣内俊哉氏 私は自分を代表だと思ったことはありませんが、一つ事例をご紹介します。皆さんは車いすユーザーがお店で食事するとき、椅子は要らないと思っていませんか。実際には、椅子に座って食事をしたい方もいるので、椅子か車いす、どちらを使うかを先に聞く必要があります。障害のある人に対して、固定観念や価値観を押し付けずに常に選択肢をもつことが大切です。
-
株式会社ミライロ 代表取締役社長 垣内 俊哉(かきうち・としや)
2010年株式会社ミライロを設立。「ユニバーサルマナー検定」などの事業を展開。
星賢人氏 LGBTに関することは、「困っている」、「辛い」など感情的な部分が先行しがちなので、論理的な部分も加えて話すよう心がけています。例えば、私は同性婚に賛成ですが、一方で反対する方もいます。世の中には、同性婚に賛成、反対する人たちはそれぞれどれくらいの割合でいて社会に何が必要なのか。私個人の意見を話すこと以上に、社会全体を俯瞰した視点で課題に向き合うことが必要だと思っています。
-
株式会社JobRainbow 代表取締役CEO 星 賢人氏(ほし・けんと)
2016年LGBT向けの就職情報サイト「Job Rainbow」を立ち上げる。現在66万人と500社が利用する総合人材サービスに成長。
神谷円香記者 パラリンピックを分かりやすく伝えるために、義足の選手や視覚障害者ランナーと伴走者など象徴的な写真を使ってしまいがちですが、知的障害のある選手など「見えない障害」をどう伝えるかは課題だと感じています。
-
東京新聞記者 神谷 円香(かみや・まどか)
2010年入社。17年からパラスポーツ取材を始め、平昌、東京のパラリンピック2大会を現場で取材。
一つに括ることの功罪
奥野 善意の行いが相手を傷つけたなど、自覚なき差別についてはどう思いますか。
神谷 悪気はないと思いますが、介護や福祉職の方が利用者に対して幼児言葉を使うという事例はよく聞きます。
垣内 日本人は障害者に対する対応が「無関心」か「過剰」の二極化しているように思います。無関心は遠慮、過剰は思いやりが膨らんだ結果かもしれません。その中間を模索する必要があると思います。
奥野 LGBTの当事者からカミングアウトされたとき、そのことを本人の許可なく第三者に言いふらすことを「アウティング」といいます。善かれと思ってやってしまう人がいますが、危険な行為です。
神谷 どう対応してほしいかは、一人ひとり異なります。個々を知ろうとすることが何より大切なのだと思います。
奥野 本日の講演では障害者とLGBTの当事者として登壇されました。一つのテーマで括られることに対してはどう思いますか。
垣内 デメリットがあるとすれば、一人分の講演時間が短くなったことくらいですね(笑)。
星 例えばLGBTに関して、LGBとTは共通点もありますが、困難は大きく違います。一つに括られることで課題が見えにくくなることはありますが、一方で連帯しないとここまで社会は変わらなかったと思います。
神谷 LGBTという言葉が生まれ注目された一方、カテゴライズされる怖さもあります。この功罪を考えながら、伝えていきたいと思います。
奥野 声を上げられないほどの困難を抱える人々の声にも耳を傾けていきたいです。
第3部 実際に見て、触れてみよう
車いす体験
協力:オーエックス エンジニアリング
車いすに乗って障害物を乗り越える体験を行いました。
義足体験
女性の義足ユーザー支援などを行っている特定非営利活動法人ハイヒール・フラミンゴの説明やサポートを受けて義足歩行体験を行いました。
特定非営利活動法人 ハイヒール・フラミンゴ 代表 野間 麻子さん
参加者の皆さんから義足について多くの質問をいただき、社会的に義足への関心が高まっていると感じました。