シンポジウム

2016/06/30

第2回 シンポジウム 開催レポート

年齢、性別、国籍、障害の有無など『多様性』と向き合うことについて考えるシンポジウムの第2回。今回は車いすの視点、LGBT理解、産後女性支援などに関する取組事例が、力強いメッセージとともに紹介された。

誰もが暮らしやすい社会に向けて

 私の人生には3つの転機がありました。21年前、ダウン症の長男の出産。11年前、夫の突然死。その2年後、私自身が病いに倒れ、胸から下が完全麻痺、車いす生活になり8年目です。3つの出来事には絶望が伴いましたが、学ぶこともありました。ゆっくりだけど成長する長男の姿に、人と違うからこそ気づく幸せがありました。夫の死は、「ありがとう」や「ごめんね」を伝えることの大切さを教えてくれました。そして突然の車いす生活。ついに限界、「死にたい」と言った私に、娘はこう言いました。「ママ、ちょっと待って。私が大丈夫にしてあげるから、それまで生きてて」。彼女は仲間とミライロという会社を設立し、私は今、そこで講師として働いています。110㎝という車いすの視点だから気づいたことや、高齢者や障害者の気持ちを理解し、適切な手助けをするためのユニバーサルマナーをご紹介しています。皆さんに今日お伝えしたいのは「視点を変えてみる」ということ。自分とは違う誰かの視点に立つことで、その人に寄り添うことができる。目の前にいる人を知ることで、できることがたくさんあります。

 見方を変えれば、悪い出来事も前向きな結果に変えることができます。病気でたくさんのことを失ったけれど、私は今が一番幸せです。

岸田ひろ実氏

株式会社ミライロ 講師/
(一社)日本ユニバーサルマナー協会 講師

岸田ひろ実氏

知的障害のある長男の出産、夫の突然死を経験後、2008年急性大動脈解離に倒れ車いす生活に。心理学を学び講師となる。講演数は年間150本以上。

LGBTと、いろんな人と、いっしょに

 LGBTは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字。僕はゲイです。小さいころから「男の子が好き、誰にも言えない」と思ってましたが、オーストラリアの大学に留学したらとてもオープンな国で、知り合いもいないし、初めて自分らしい生活ができた。2年後に帰国して就職、週末にNPO活動を始めました。LGBTは日本に 7・6%もいるのに、目に見えないため世の中の仕組みから漏れてしまう。家族を作ることを想像しづらい。LGBTもそうでない人も一緒に年を重ねていけたらと「グッド・エイジング・エールズ」と名付けました。

 LGBTの人がちょっとだけ見える場所としてカフェやシェアハウスを作ったり、イベントを開催したり、企業人事部とカンファレンスも行っています。よりポジティブに可視化する取り組みとして始めたのが「OUT IN JAPAN」。写真家レスリー・キー氏がこの1年で約千人のカミングアウトポートレイトを撮影、目標は2020年までに1万人!HPには一人ひとりのメッセージも掲載しているので、ぜひ読んでください。

 今後は「LGBTウェルカム」な人を少しずつ可視化できたら、未来が描けないLGBTの人たちも自分らしく輝けるかもしれない。より多くの人に、ぜひ声に出して「ウェルカミングアウト」してもらえたらと思います。

垣内俊哉氏

認定NPO法人
グッド・エイジング・エールズ代表

松中 権氏

石川県生まれ。一橋大学卒業後、大手広告会社入社。NY研修でNPO関連事業に携わった経験をもとに2010年NPO法人設立、14年東京都認定取得。

みんなが活躍できる社会とは

 マドレボニータはスぺイン語で「美しい母」。母となった女性が人生を自分らしく生きることを支援しています。18年前に出産を経験し、体も心もボロボロなのにケア制度が何もないことに愕然とし、産後ケアの教室を設立。産後の体のリハビリと、母となった自分がどう生きていきたいかを語り合うワークショップを、現在12都道県60カ所で展開。参加者は3万人を超えました。産後は社会から孤立しがち。産後うつや乳児虐待も社会問題として認知されつつあります。障害児や多胎児の母、ひとり親などの受講料を補助する「産後ケアバトン制度」も導入。補助を受けた人がボランティアとして支援する側に回るなど、支援のバトンがつながっています。

垣内俊哉氏

NPO法人
マドレボニータ代表

吉岡 マコ氏

 

地方におけるLGBTアクティビティのススメ

 僕の故郷・神栖市は、茨城県最東端の街です。高校卒業後、音楽の道へ進むため上京し、大学卒業直前に東日本大震災が発生。地元が被災したことで郷土愛が一気に芽生え、以降は高速バスで都内と茨城を行き来する日々。同時期に自身のセクシュアリティについて悩む出来事があり、気軽にご飯に行ける友だちが欲しくてツイッターを始めると、フォロワー2千人。仲間の輪がどんどん広がりました。このつながりを地元にこそと思い立ち「にじいろ神栖」を設立。県内当事者ネットワーク作りの活動がメディアに取り上げられ、今度は教員向け研修会に呼んでいただく日々。どんな地方にも当事者はいるし理解者もいます。地域を面白くするために小さなことから始めてみませんか?

垣内俊哉氏

歌うLGBT
アクティビスト

河野陽介氏

 

LGBT非当事者だからこそできること

 青山BB(Beyond Borders)ラボは、2020年のオリンピックを視野に、偏見のないフェアなおもてなしのできる社会を目指そうと2014年にスタートしました。LGBTだけでなく誰もが暮らしやすい社会を目指し、レクチャーやシンポジウム開催、LGBTを含む10代の高校生を応援するアメリカのアニメ「マックタッキー・フライド・ハイ」の日本語吹き替え版制作にも取り組んでいます。日本のLGBTが7%なら、残りの93%が変わらなければ当事者が暮らしやすい社会にはならない。偏見は「知らないこと」から生まれます。さらに憂えるのは「知ろうとしないこと」。学生たちはラボのプロジェクトを通して「変えようと思えば、社会は変えられる」ことを実感しています。

垣内俊哉氏

青山学院大学
客員教授

岩渕潤子氏

 

参加者の声

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