レポート

2021/07/31

羽ばたけhirari みんなの扇子  UD扇子 プロジェクトレポート Vol.03

 この度、本企画の6周年を記念して、『HEART&DESIGN FOR ALL@ミライロハウス』が開催されました(6/28~7/11)。初日には、(株)ミライロ 代表取締役社長 垣内俊哉さんの公開インタビューと、みんなの扇子『hirari』製作関係者を交えての座談会も実施。期間中に行われた、『hirari』展示の様子も合わせてレポートします。
○これまでのプロジェクトレポート
vol.1/

vol.2/


<第一部>HEART&DESIGN FOR ALL 6周年記念 公開インタビュー

誰もが暮らしやすい社会の実現へ ~2021年からその先へ~

株式会社 ミライロ 代表取締役社長 垣内 俊哉さん

 HEART&DESIGN FOR ALLのスタートは2015年。東京新聞さんがユニバーサルデザイン(以下UD)や弊社の理念に強い関心を持ってくださり、「一緒に発信していきましょう」と言っていただいたことはとても心強かったです。
 弊社は2010年の創業以来、環境・意識・情報のバリア解消に取り組んできました。環境のバリアフリー化は大きく進み、国土に限りのある日本においてはもはや限界。今後は「バリアをなくす」のではなく「バリアをつくらない」工夫が必要です。そのためには、新しい施設を造る際、多様な方の声を取り入れる必要がある。弊社では5000人の障害のある方にモニター会員として登録いただき、彼らの声をものづくりやまちづくりに生かす「ミライロリサーチ」という事業を行っています。『hirari』の製作に際してもモニター協力をさせていただきました。
 次に意識ですが、障害のある方が何に困りどんなサポートが必要なのかを「ユニバーサルマナー」と名付け教育研修にしました。講師は障害のある当事者です。これまでに国内で延べ10万人に習得いただいています。コロナ禍でオンラインやeラーニングも始めたところ、地方の方の受講が増えました。
 情報面に関しては、バリアフリーの地図アプリや、デジタル障害者手帳の開発のほか、7月1日から国の取り組みとして本格スタートした「電話リレーサービス」にも力を入れています。
 日本の素晴らしいUDの商品やサービスやまちづくりを世界に示していけるよう、ミライロができることを探し続けていきます。ゆくゆくは日本で培って来たUDのノウハウを海外の企業にも生かしていただけるよう、国内事業をさらに深めていきたいと思っています。

6/28、丸井錦糸町店5階「ミライロハウス TOKYO」にて開催された座談会風景。※当日は新型コロナウイルス感染症対策を徹底して実施しました。

<第二部>座談会

みんなの扇子『hirari』 製作関係者座談会

<デザイン等全体のディレクションを担当>
CHERRY INC. アートディレクター 大橋 謙譲さん
 UD扇子を作るにあたりまず「どのような価値を付けられるか」という苦労がありました。ミライロリサーチさんの意見を参考に、「片手で楽に開く」ことをアイデンティティと決め、日本セルプセンターさんと相談し製作を進めました。追求したのは僕ら自身も欲しいと思える仕上がり。もうひとつは、商品としての完成度と耐久性で、正直まだ課題が残っています。就労支援事業所の製作の場を目にする機会があったのですが、障害の有無を感じさせないほどの精緻な作業でした。ここで終わりにせず、レギュラー販売へのプロセスを踏めたらと思っています。

<ネーミング、リリースコピー等を担当>
株式会社 ADKクリエイティブ・ワン コピーライター 川瀬 真由さん
 皆が楽しんで使えるようにという願いをオノマトペ的な響きに込め『hirari』と名付けました。海外の方にも使っていただけたらと思い、色の名称もすべてローマ字で表記しました。普段の仕事でCMなどを作る際も、誰かを仲間外れにしない表現に配慮していますが、一人ひとりの声を聞く機会はなかなかないので、『hirari』の読者モニターさんから、うれしい言葉を直接いただけたことは、とてもありがたい経験でした。  

<製作に際し就労支援事業所をコーディネイト>
認定特定非営利活動法人日本セルプセンター 事務局長 小林 克彦さん
 製作工程がいくつも分かれていたことで、複数の事業所に発注することができました。組み立ては都内の就労継続支援A型事業所で、木部は多摩の間伐材を使用し、加工は日の出町のB型事業所で、布袋は福島市の縫製を専門とするB型事業所で行いました。障害者就労事業所の存在を知ってもらい、仕事のチャンスをいただけたことに感謝しています。彼らの自立に向けて所得を向上させるためにも、『hirari』の今後に期待しております。

<ミライロリサーチとしてモニター調査に協力>
株式会社 ミライロ 代表取締役社長 垣内 俊哉さん
 『hirari』を初めて手にしたとき、障害のある方だけでなく皆が使いたいと思えるデザインだと感じました。何より素晴らしいのは、障害のある方たちの働く機会につながっていること。今後は、障害のある方を戦力にしたものづくりが日本の新しいスタンダードになっていきます。ぜひこのようなプロジェクトを社会に広げていってほしいと思います。

 


新たな気づきや視点と出会える場  「ミライロハウス TOKYO」でお披露目

 今回の会場となった「ミライロハウス TOKYO」は、ミライロが運営する情報発信と交流の拠点。先進的なITデバイスや、生活を豊かにする製品・サービスが展示された店内に、『hirari』コーナーが設けられ、開発ストーリーとともに紹介されました。期間中、老舗着物小売業(株)やまとによるユニバーサルきものの試着体験イベントの開催もあり、会場ではユニバーサルきものとUD扇子を合わせての展示も実現しました。

東京新聞の紙面パネルと共にディスプレイされた『hirari』の展示コーナー

ユニバーサルデザインの視点を取り入れた浴衣と共に


『hirari』読者モニターの声 ~アンケート回答の一部~

Q.1 使ってみた感想は?
●軽いのにパワーがある ●開きやすい ●前腕に痛みがあるが、気にせず使えた ●少ない力で風がくる ●風がやわらかい

Q.2 開発ストーリーの感想は?
●より一層大切に使いたいと思った ●作り手の生きがいに繋がっている素敵なプロジェクト ●誰にでも使いやすい製品開発が当たり前の時代になって欲しい

Q.3 改良点は?
●耐久性が心配 ●音が少々気になった ●開閉を繰り返すと糸がずれてしまう ●手が不自由だと袋に入れにくい


COREDO 室町で『hirari』に会える!TOKYO エシカル マーケット in コレド室町3

東京都の障害のある方々による丁寧に手間をかけて作った個性的な手づくり雑貨「KURUMIRU」を始め、障害者施設の素敵な雑貨を集めました。

<開催期間>
2021年8月5日(木)~8月31日(火)
平日:11:00~20:00
土日祝:11:00~19:00
※営業時間等に変更がある場合があります。事前にコレド室町のホームページをご確認ください。

<場所>
コレド室町3 3階
住 所/東京都中央区日本橋室町1-5-5

<コレド室町 ホームページURL>
https://www.mirairo.co.jp/mirairo-house/event/58_0428

関連記事