レポート

2024/04/24

<寄稿>第6回「障害のある子の進路の話」/「発達障害について学ぼう!」全10回シリーズ

中部学院大学非常勤講師

山内康彦

【“ロケット理論”将来を見すえた上で今が大事!】

教育の世界では、「今が大事!」とよく言われますが、特別支援が必要な子どもたちは、「将来を見すえた上で今が大事!」となると私は考えています。まずは、その理由を2つお話しします。

1つ目の理由 「特別支援が必要な子どもたちは、身につくための時間が長く必要」

 定型発達の子どもたちは、中学3年生になって進路を決定することが多いと思います。しかし、特別支援が必要な子どもたちは、それでは間に合わないのです。例えば、特別支援学級の子どもたちは、通常の学級の子どもたちに比べて学習進度が遅れています。(高校入試の時に評価される内申点と呼ばれる通知表の15がつかない場合もあります。)中学校3年生と時に「一般の高校に進学したい!」と言っても、学力や内申点が追いついていないのです。「今から頑張る!」と言っても追いつく力は十分にありません。つまり、通常の高校に進学したいならば、遅くとも中学1年生になる時に、学校側に希望を話すと共に、その準備をする必要があるのです。

2つ目の理由 「毎年のように学級の担任が替わる」

 現在は、特別支援学校でも原則毎年担任が替わります。特別支援学級においても数年で変わります。様々な先生に指導してもらうことは貴重な体験になるというよさがありますが、将来に向けての目標、計画が十分に引き継がれないまま時間が過ぎていってしまう危険性があるということです。

みなさん、「ロケットの発射」を考えてみてください。

 ロケットは、必ず目標を決めて発射します。目標を決めたら、着陸地点へ行くために、エネルギーや発射角度を決めます。一度低く打ち上げたロケットを急に高い角度へ軌道修正することはできないのです。つまり、一度低い目標で支援を続けられた子どもたちが、中学生なって急に高い目標にしたいと言っても難しいのです。これを私は、“ロケット理論”と名付けています。まずは、中学校の出口をしっかりと考えて、現在の支援を決めていく必要があるということです。このことは、保護者から学校へ声を上げないといけないことも注意が必要です。

【障害のある子は、中学校卒業後に大きく2つ、細かくは4つの進路に分かれる】

 昔は、中学校卒業生は、“金の卵”と呼ばれ、上京して働く機会が多くありました。しかし、現在は違います。中学校を卒業した99%以上の子どもは、『特別支援学校高等部』もしくは『高校』へ進学するのです。社会に出るのは、早くても成人になる18歳以降というのが現在の一般的な考え方です。実際、ハローワーク等へ問い合わせてみても、中卒で正社員として就労を探すことは非常に困難です。

つまり、まずは、『特別支援学校高等部進学か?』『高校進学か?』を選択することになります。

更に、特別支援学校高等部を選択すると、障害の重い子も受け入れる『地域の一般の特別支援学校高等部』と『卒業後の就労実績の高い高等特別支援学校高等部』の二つがあります。この高等特別支援学校高等部に入学するためには、①学力試験(小4程度)②面接試験③作業の試験④自力通学ができるという四つの課題があることを知っておいてください。前述したように早期からの準備が必要になります。中学校3年生になって、慌てて目指しても合格することは難しいです。小学校の段階からそれなりの教育を積み上げていくことが必要となります。

また、高校についても二つあります。『一般的な通常の高校』と『不登校や特別支援学級の生徒を受け入れてくれる特別な高校』です

一般的な通常の高校は、少人数や個別指導はありません。期末テストで赤点をとったり、出席が不足したりすると留年してしまいます。入試は五教科のテストに加えて、内申書と呼ばれる1~5の通知表の点数が大きな割合を占めています。そして入学後は、中学3年生までの学習ができたものとして高校の学習が進んでいきますので、不登校や学習が遅れている特別支援学級在籍の子が、進級することは大変難しくなっています。

そこで、現在増えてきているのが、『不登校や特別支援学級の生徒を受け入れてくれる特別な高校』です。

通信制サポート高校や私立だけでなく、現在は、公立高校の中に、不登校や特別支援が必要な子を対象としたクラスを高校の中に設ける都道府県が出てきました。今は、高校の種類も増えて、広く受け入れてくれる場所ができてきているのです。だからこそ、早くからお子さんの将来を見すえて現在の療育を通わせることが非常に重要になってきているのです。

特別支援学校高等部がよいのか、高校が良いのかは、一概に言えません。
“お子さんに合った進路を選ぶ”ことが最も大切であると考えます。

この件については、山内の著書『特別支援が必要な子どもの進路の話(WEVA出版)』の中で詳しく説明してあります。ご興味のある方は、ぜひ一読していただけるとよいかと思います。

山内康彦

中部学院大学非常勤講師
学校心理士SV・ガイダンスカウンセラー
(一般社団法人)障がい児成長支援協会 代表理事・元日本教育保健学会理事

山内康彦

1968年3月30日生まれ 岐阜県
 専門は特別支援教育と体育。岐阜県の教員を20年務めた後、坂祝町教育委員会で教育課長補佐となり、就学指導委員会や放課後子ども教室等を担当。その後、岐阜大学大学院教育学研究科(教職大学院)で学び、小中高・特別支援学校の専門職修士となる。その後、学校心理士やガイダンスカウンセラーの資格も取得。私立小学校の勤務を経て、現在は(一般社団法人)障がい児成長支援協会の代表理事を勤めながら、学会発表や全国での講演会活動、教職員等への研修講師を積極的に行っている。現場目線で、具体的な解決策を提案する講演会は各地で好評を得ている。2020年3月には、岐阜大学大学院地域科学研究科を修了。本年度、学校心理士スーパーバイザー(SV)資格取得。著書には「特別支援教育って何?(WAVE出版)」「体育指導用教科書(学研)」「特別支援が必要な子の進路の話?(WAVE出版)」等多数あり。

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