レポート

2020/12/03

誰もが使いやすいカタチを共につくる         UD扇子プロジェクトレポート

 2015年9月にスタートしたHEART & DESIGN FOR ALLでは、「誰もが暮らしやすい社会の実現へ」をスローガンに、多様性と包摂性、ユニバーサルな商品やサービスなどについて、さまざまな企業・自治体・団体の取り組みを紹介してきました。その理念をさらに拡げるための啓発ツールとして、今回これまで取材を通して出会った方々と共にひとつのプロダクト(製品)をカタチにすることに挑戦しました。選んだテーマは「誰もが使いやすい扇子」。試行錯誤を重ね、ついにカタチとなったこのユニバーサルデザイン扇子プロジェクトについてご報告します。


いくつもの出会いが重なり扇子『hirari』が誕生

 東京新聞と(株)ミライロの出会いからスタートしたHEART & DESIGN FOR ALLでは、ミライロの代表取締役である垣内俊哉さんとの交流を通して、障害者だけを対象とした「バリアフリー」ではなく、より多くの人が使いやすい「ユニバーサルデザイン」について考えてきました。そして、その考えをひとつのカタチにするためにプロダクト製作を目指し一歩を踏み出しました。
 まず何をつくるのかについて、「障害のある方でも誰もが使いやすいもの、日常的に使うもの、愛着の持てるもの」という3つの柱を立てました。バッグ、箸、筆記用具などさまざまな候補の中から選定したアイテムは「扇子」。その後、ユニバーサルデザイン特集の取材でお会いしたプロダクトデザイナーの廣田尚子さん、アートディレクターの大橋謙譲さん、ミライロが運営するミライロ・リサーチのモニターの方々などのさまざまな意見をお聞きし、ご協力を得ながら、何タイプかの試作品が完成。それらを元にモニター調査を行い、改良を重ねました。組み立て作業の委託先には、働く意欲やスキルのある障害者の方の就労の場とさまざまな企業を橋渡しする日本セルプセンターを通して紹介していただいた作業所「ワクわーく」さんにお願いすることになりました。こうして誕生したオリジナル扇子は『hirari(ヒラリ)』と名付けられました。このhirariがHEART & DESIGN FOR ALLの理念を拡げ、さらなる出会いが、末広がりにつながっていくことを願っています。

『hirari』の材質は木と紙。全6色のカラーバリエーションで展開