レポート
2018/06/04
共に創る、誰もが 暮らしやすい未来
ひとりではつくれないものを創れる、『共創』のチカラ
「このプロジェクトは奇跡の連続でした」と自身も驚く展開で実証実験にまで成長した「&HAND」。2016年6月、ワークショップデザイナーであるタキザワさんが、Googleが主催するアイデアコンテストに応募するため、知り合いに声を掛けてチームが発足。10人のメンバーが会社の仕事ではなく、自分が心からやりたいことに向き合いながらアイデアを出していった。その中のひとつが「スマート・マタニティマーク」。
「初めて妊娠された方が『マタニティマークってどこでもらえるんだろう』とインターネットで検索した際、『不快』『嫌がらせ』など、ネガティブな情報ばかりを目にする状況を変えたかった」とタキザワさん。「自分の子どもが大人になったときに、このままの社会じゃ恥ずかしい、子どもたちが大人になる前に社会を変えたい、と思った」。妻が第一子妊娠中に切迫流産で受診した時だった。満員電車の中でビジネスマンに席を譲ってもらったありがたさがタキザワさんの心に強く残っていた。タキザワさんが目指しているのは「やさしさからやさしさが生まれる社会」。席を譲りたいのに行動に移せずにいる人の背中を押す仕組みとして制作した「スマート・マタニティマーク」は、前述のコンテストで見事グランプリ獲得。その後、社会実装に向け課題を洗い出し、妊婦だけでなく手助けを必要とするすべての人が使えるサービスを目指していった。障害のある知人などへのヒアリングを重ね、LINEを活用した「&HAND」に進化。2017年3月、「LINE BOT AWARDS」でグランプリに輝き、ビジョンに共感した企業の協力を得て、銀座線での実証実験が実現。その様子は各メディアに取り上げられた。「福祉やテクノロジーの専門分野だけでなく、テレビなどでも取り上げていただき、多くの人にPLAYERSの活動を知ってもらうことができた」。
今後、「&HAND」はフィールドや対象者を広げての実証実験を実施予定。また、毎年11月に渋谷区で開催される「超福祉展」への出展も決まっている。今年は本展に先駆け、タキザワさんがワークショップを実施し、出展者や企業、団体とのコラボレーションを仕掛けていく。「自分1人では作れないものを生み出すことができる『共創』のチカラを信じている。自分が知らない世界を知っている障害者や、既成概念にとらわれない子どもからは学ぶことばかりです」。その言葉通り、子どものアイデアを大人がカタチにし、それを子どもが評価するという画期的なプロジェクトにも取り組む。「障害のある人も子どもも、お互いに学び合い成長できるプロセスを大切にしたい。一人一人がプレイヤーになって、一緒にワクワクしながら世の中の問題に立ち向かっていきたいです」。
タキザワさんはワークショップで2020年の先を問いかける。「2030年はどんな社会であってほしいですか?」
●PROFILE●タキザワケイタさん
本業の広告代理店では新規事業開発、ブランディング、人材育成、組織開発など企業の課題に取り組む傍ら、多様なプロフェッショナルからなるコ・クリエーションチーム「PLAYERS」を主宰し、社会課題の解決に向けた活動をしている。レゴ®シリアスプレイ®認定ファシリテーター。ユニバーサルマナー検定 2級取得。