レポート
2017/09/21
“日本一ユニークな動物園”を目指す「沖縄こどもの国」
●誰もがどこからでも動物の生態を見られる工夫を
沖縄県沖縄市にある「沖縄こどもの国」は、日本最南端の動物園。昭和52年開園という歴史を有し、広大な敷地に動物園のほか、体験型展示が特徴の「ワンダーミュージアム」、講座や企画展を楽しみながら学べる「チルドレンズセンター」など、複数施設が併設されています。
同園では、平成26年より沖縄市のプロジェクトとして「日本一ユニークな動物園」を目指し、リニューアル計画が進行中。今年度の主要事業は、バリアフリー設計で新設されるライオン舎。昨年3月に東北サファリパークより寄贈されたホワイトライオンの生態を「誰もがどこからでも見ることができる」施設を来春オープン予定です。沖縄市 企画部 プロジェクト推進室の西憲太郎さんに構想を聞きました。「車いすやベビーカーの人もスロープで回遊できる空中デッキを整備。勾配を緩やかにするためには距離が長くなるため、周りの景色も楽しみながら、ライオン舎中央の岩山の中を通るなどの工夫も。訪れるすべての人が、動物の生態を間近に感じ楽しめる施設を目指している」。
●当事者のアドバイス、現場の声をプロジェクトに反映
同園では、本プロジェクトにバリアフリー専門家や障害当時者の視点を取り入れるべく、沖縄県文化観光スポーツ部観光整備課が取り組む「観光バリアフリーアドバイザー派遣事業」による意見交換会を行いました。車いすで現地を訪れたアドバイザーの仲根建作さんは那覇市在住。「子どもが小さい頃に家族で何度か訪れたが、とにかく勾配がきつかった(笑)」と、思い出を語りながらプロジェクトチームとともに園内を視察しました。
これまでは、県内からの来園者がほぼ9割を占めていたという「沖縄こどもの国」。近年の傾向を、園長の高田勝さんに聞きました。「沖縄の子なら遠足で必ず来る、というくらい地元密着施設だったが、ここ数年、台湾・香港からの観光客が急増。2世代、3世代の家族も多く、外国人、高齢者に配慮したユニバーサル化は急務と考えている」。
ハード面だけでなくソフト面も重視する同園では、スタッフ一人ひとりの意識も変化しています。「動物園の使命として、動物がしいたげられない環境を守ることは基本。その考え方は来場される人に対しても同じ。日射の強い沖縄では、車いすやバギーを利用する方たちへの反射熱の配慮が重要だ。打ち水、細霧、給水ポイントなどがどこに必要かといった意見が、飼育の現場会議で上がる。同じ生き物としての視点で、ごく自然にそうした声が上がることが、とても誇らしい。プロジェクトに反映していけたらと思っている」。
アドバイザーの仲根さんは、アメリカのサンディエゴ動物園やヨセミテ国立公園を視察した際「自然環境とユニバーサルデザインとの調和を突き詰めている」と感じたといいます。「多少の不便も、自然優先であるという園のコンセプトが伝われば楽しめる。沖縄こどもの国も、人と動物との調和を一層感じられる施設になってほしい」とアドバイスを締めくくりました。 動物園は日本各地にありますが、起伏の激しい立地も多く、訪れることをためらう人や、あきらめている人もいるかもしれません。動物園には子どもはもちろん、すべての人が享受できる、癒しや、感動や、驚きがあります。「日本一ユニークな動物園」を目指す「沖縄こどもの国」の今後に、要注目です。
〇営業時間
4~9月 9:30~18:00 ※入場は 17:00 まで
10~3月 9:30~17:30 ※入場は 16:30 まで
〇一般入場料金 大人:500円 中学生・高校生:200円 4歳以上~小学生:100円
※幼児(3歳まで):無料
〇お問い合わせ 公益財団法人 沖縄こどもの国
住所 沖縄県沖縄市胡屋5-7-1
TEL. 098-933-4190
FAX. 098-932-1634
HP https://www.okzm.jp/