レポート

2018/01/22

ダイアログ・イン・ザ・ダーク
Show case for 2020 Tokyo
~暗闇で感じる日本文化~

今回アテンドしてくれたキノッピー(中央)と、Sei-Ken(左)、ランラン(右)

完全に光を遮断した空間で、視覚障害者のアテンドの案内のもと、探検しながらさまざまなシーンを体験する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」。1988年にドイツで生まれたこの暗闇のソーシャルエンターテインメントを日本で運営する一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティでは、2020 年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けて、国内外からの来訪者が視覚以外の感覚で日本文化のエッセンスをより深く体験できる特別プログラム「ダイアログ・イン・ザ・ダークshow case for 2020 Tokyo 暗闇で感じる日本文化」の先行体験会を開催しました。1月6~10日の5日間に14名のユニットを各日5回。約90分の特別なコンテンツをレポートします。

今回のツアー参加者は13人、メインのアテンドはキノッピーこと木下路徳(きのした・みちのり)さん。最初は明るいロビーで参加者が車座になり軽く親睦タイム。これから体験する「日本文化」の世界への導入と、初めましてのぎこちなさを解きほぐしてくれるスタッフの進行はさすがです。

今回は、日本文化の魅力を体験する特別コンテンツでした。暗闇のメイン会場(であろう空間)に進む手前の空間で、暗闇に慣れるためにちょっとした準備をしました。真っ暗闇の中、参加者はお互いのニックネームを名乗り合い、あいうえお順に並ぶというミッションに全員でトライ。

これが思った以上に楽しく大盛り上がり。前後の人のニックネームを呼びながら手探りで相手を確かめ合ううちに芽生える連帯感。完璧なウォーミングアップを経て、前の人の肩に手を置き、連なった一団は前に進みます。

空気がひんやりと変わり、少し乾いた植物の匂い。耳を澄ませば聞こえてくる日本の四季折々の音。目を開いても、閉じても変わらない純度100%の暗闇の中、近くにいる人の気配を感じられる安心感。

その後、参加者は2つのグループに分かれ、メインイベントである書き初めと初釜を体験しました。視覚以外の感覚を研ぎ澄まして触れる日本の伝統文化は、日本人でさえ驚きと発見の連続。海外からのゲストが暗闇でこのプログラムに出会ったなら、どれほど神秘的な体験になるでしょう。

最後にアテンドに導かれるまま靴を脱ぎ、手探りで段差を上がると畳の手触り、そしてこたつがありました。13人で肩を寄せ合ってこたつを囲み、手探りでみつけたみかんを分け合いました。暗闇の中で微かに聞こえるみかんをむく音、広がるみずみずしい香り。

この後、暗闇の中で靴を履く段になり最後にもうひと騒ぎ。「履けば案外わかるもんです」というキノッピーの言葉通り、全員ちゃんと自分の靴を履き、明るいロビーに戻ると、ほっとすると同時に、なんだか少し照れくさい気持ちになってしまうのはなぜでしょう。

HEART & DESIGN FOR ALLでは、2017年7月特集でダイアローグ・ジャパン・ソサエティ代表理事の志村季世恵さんにインタビューしました。そのとき志村さんは「暗闇の中で出会った感覚を忘れないで」と、言いました。「明るい所でも知らない人と声を掛け合える温かな社会を、ちょっと前の日本はそうだったはず」と。

今回のプロジェクトは、内閣官房オリンピック・パラリンピック推進本部事務局の委託により、平成29年オリンピック・パラリンピック基本方針推進調査として実施されました。 ダイアローグ・ジャパン・ソサエティでは現在、企業研修を中心に、アテンドによるコンサル業務、2020年に向けてダイアログ・イン・サイレンス(聴覚障害者がアテンド)、ダイアログ・ウィズ・タイム(70歳以上の人がアテンド)も含めた体験ができる「ダイアログ・ミュージアム」開設に向けて活動を続けています。

東京での常設会場の再開が待ち遠しいダイアログ・イン・ザ・ダーク(ちなみに大阪「対話のある家」/では常設開催中です)、これまでに体験した人は、ぜひ「あの感覚」を明るいところでも思い出してください。ためらって飲み込んでいた声を、そっと目の前の誰かに向けて発してみませんか。

◆お問い合わせ
ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン【Tokyo Diversity Lab.】
TEL  03-6231-1633(平日:10時〜18時)
FAX  03-6231-1632
Mail: こちらまで

関連記事