レポート

2018/11/01

チョコレートの魅力で 多様な人が輝く社会を

ブランドコンセプトを表現する人気商品「QUONテリーヌ」

障害のある人など多様な人が働くチョコレートブランド「久遠チョコレート」が、この秋、東京地区では初出店となる「荻窪店」をオープンしました。ブランドの生みの親は、愛知県豊橋市の一般社団法人ラ・バルカグループ代表理事・夏目浩次さん、ブランドを共に磨き上げてきたのは人気ショコラティエの野口和男さん、そして「荻窪店」を運営するのは、杉並区の社会福祉法人いたるセンターです。夏目さん、野口さん、いたるセンター理事長・谷山哲浩さんに、それぞれの出会いまでさかのぼりお話をお聞きしました。


 profile 
    • ■夏目浩次さん(一般社団法人ラ・バルカグループ代表理事)
    • ―2003年パン工房開業。12年一般社団法人ラ・バルカグループ設立。14年久遠チョコレートを立ち上げる。
    • ■谷山哲浩さん(社会福祉法人いたるセンター理事長)
    • ―1989年社会福祉法人いたる臨床発達指導センター理事就任。1995年同理事長に就任し、現在に至る。
    • ■野口和男さん(久遠チョコレート シェフショコラティエ)
    • ―40代から独学でチョコレートの原料調達から商品開発まで全工程を知り尽くす異色ショコラティエ。

 

失敗したら溶かせばいい チョコレートの魅力

左から谷山さん、夏目さん、野口さん

夏目 僕は、大学では土木工学が専門でした。駅のバリアフリー設計の仕事を通して障害のある方たちと接する機会があって。彼らがどういう生活をしているのかと、たまたま読んだ本で「働く場所がなく自立が難しい」と知り、いくつか社会福祉施設を見学し現実だとわかった。これを「仕方ない」で片付けたら発展はない、と会社を辞め、25歳のときに小さなパン屋で独立しました。障害のある人も働き方を選択できる社会にしたくて。

谷山 私は、夏目さんのこの理念に惚れたんです。いたるセンターは1967年に障害者が仕事をできる施設として設立しましたが、障害の重い人は難しい仕事はできず賃金が低い。これをどうにかできないかと調べる中、夏目さんのHPにあった「工賃倍増計画」というビジョンに惹かれ、教えを乞いに行ったのが12年前です。

夏目 社会福祉法人の老舗なのに価値観が多様でユーモアもあって、びっくりしました(笑)。

谷山 うちにもパン作りをやりたいチームがあったので、ご指導いただきすぐにスタートしました。

夏目  僕自身はカフェ、飲食店、印刷と事業を広げる中で、お客様へのサービスの質を保つには、どうしてもスピードが重要になることに悶々としていました。誰も置き去りにしない事業はないものかと悩む中、ショコラティエの野口さんと出会ったんです。

野口 いきなり僕の車に乗り込んできた(笑)。

夏目 6年前です。ある方の紹介で初めてお会いしたとき、この後すぐ車で移動と聞いて、どうしてもお話ししたくて。

多様な商品が並ぶ店内

野口 チョコレートって、良い材料を正しい分量使えば、あとは直径30センチのボウルの中で、溶かして固めるだけ。失敗したらまた溶かして作り直せばいい。誰も置き去りにせずできると彼は直感して会いに来た。やりたいんだって話をされて、「面白いからやろう」ってその場で言いましたね。

 

荻窪店が目指す地域との共生とは

夏目 久遠チョコレートをブランドとして立ち上げたのは2014年8月。今では全国33拠点で約330人が就労、障害のある人も約200人います。

谷山 このプロジェクトの話を間近で聞いていたので、我々の地元である荻窪に店を開くことは悲願でした。きちんと工賃を払える事業にするには売り上げが大事。人通りの多い、特に女性がたくさん通る、駅のそばの物件に出会えるまでに、すごく時間がかかってしまった。

夏目 その分、納得のいく店になりました。荻窪店はグループの中で一番小さいのに、ほぼフルラインナップを揃えています。ここで都心店モデルを確立できれば、都内で地域密着型店舗を展開できる。

谷山 重い障害がある人も、生まれた地域で自立して人生を全うできるような社会にすることが我々の夢。この店でそれを実現させたい。

野口 荻窪店のオリジナル商品「荻窪ロッシェ」の完成度は素晴らしい!僕は最終チェックをしただけ。

夏目 教会通りを歩いてみたら本当に多様で。店も人も、みんな違っていいし、そのデコボコをパズルみたいに組み合わせて、一口の幸せなお菓子にできたらなと。でも最初はうまくいかなくて。

野口 自分たちのアイデアを、プロとしてのフィニッシュまで持っていった。久遠チョコレートはブランドとして確実にバージョンアップしてるよね。

夏目 今後もそれぞれの地域の人とキャッチボールしながら商品を作っていきたい。

荻窪店オリジナル商品「荻窪ロッシェ」

谷山 障害のある人だけでなく、引きこもりや登校拒否の子、学校や施設に行くのはしんどいけど、チョコレート工場ならちょっと行ってみようかなと思える場所として広げていきたい。

夏目 いろんな社会の課題を解決できる、誰も置いてきぼりにしない、チョコレートって本当に魔法の食材だと思うんです。

久遠チョコレート荻窪店がオープン!

 作り手を選ばないチョコレートブランド「久遠チョコレート」の、東京初出店となるショップが、荻窪・教会通りに誕生。人気商品「テリーヌ」をはじめ、荻窪店オリジナル商品まで、魅力的なチョコレートがずらり。

  • <住  所>東京都杉並区天沼3-29-12
  • <電話番号>03-6279-9552
  • <営業時間>10:30~19:30
  • <定休日>不定休

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