レポート
2019/04/27
誰もが生きやすい社会とは
今年も「東京レインボープライド」の開幕です。性的少数者を意味するLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字)という言葉は多くの人に知られるようになりましたが、社会はどのくらい変わったでしょうか。性的少数者もいきいきと働ける職場環境づくりを目指すNPO法人 虹色ダイバーシティ 理事長 村木真紀さんにお話を聞きました。
LGBTが働きやすい職場は 誰もが安心できる環境
虹色ダイバーシティでは、2014年から国際基督教大学ジェンダー研究センターと共同で「LGBTと職場環境に関するアンケート調査」を実施しています。職場における差別的な言動の有無に関して言えば、2018年の調査でもまだ多くのLGBTの方が「ある」と答えています。今回の調査では「職場の心理的安全性とメンタルヘルス」に焦点をあてて設問を設計しました。LGBTの方のメンタルヘルスの状況は一般の方より顕著に悪いという結果が出ています。
私は2012年に団体を立ち上げるまでに5回の転職を経験しています。どれも良い仕事でしたが、レズビアンであることが言えず職場に馴染めませんでした。常に心にバリアを張って仕事を続け、最後の職場でうつになりました。このままではだめだと思い、復職を機に同僚女性にカミングアウトしたら、すごく楽になりました。
欧米では市民団体や企業がLGBTに関する調査や施策を行っていることを知り、海外データを自分なりの資料にまとめSNSでシェアしたら、いろいろな企業や自治体からデータ提供の依頼が入るようになりました。LGBT施策への世の中の関心が急速に高まり、我々のまとめたデータが企業や行政が施策を推進する際の裏付けになったのだと思います。日本独自のデータの必要性を感じNPOを設立しました。
今回の調査では、LGBT施策の数が多い職場ほど、心理的安全性が高いという結果が出ました。LGBTの施策に取り組んだ職場では、これまで話し難かったことが話しやすくなったという声もあがっています。例えば障害のある人、病気治療中の人、家族の介護をしている人、誰もが自分のことを話しやすくなる傾向があります。
今後はLGBT以外の課題と連携していくことも大切だと考えています。ホームレス支援や子育て支援の団体、マラソンやサッカーなどのイベントとのコラボレーション、楽しい経験を共有することで人は寛容になり偏見が減ります。大切なのは「ゆるさ」と「率直さ」ではないかと思うのです。すべてをルールや制度で決めることは難しい。ともに走りながら最適解を調整し続けるような社会のあり方が求められているように思います。
もしも皆さんの身近に車いすの人や、視覚や聴覚に障害のある人、LGBTの人がいたら、難しく構えず、間違っていたら「ごめんね」と言える率直さで、一歩を踏み出すことから始めてみてください。
●PROFILE●特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ 理事長 村木 真紀(むらき まき)さん
社会保険労務士。1974年茨城県生まれ。京都大を卒業後、大手ビールメーカー、外資系コンサル、IT企業などを経て、2012年虹色ダイバーシティ設立、13年NPO法人化。LGBTに関する調査、講演、コンサルティング業務などを行う。