レポート

2015/09/26

すべての人の命を守るために、ユニバーサルデザインで防災を考える

株式会社オリエンタルコンサルタンツ

 地震、台風、火山噴火、自然災害の恐ろしさを目の当たりにする事象が後を絶たない。

 12年2月に宮城県当局より発表された「東日本大震災に伴う被害状況等について」によれば、宮城県沿岸部の大震災による死亡率は、総人口比0・8%、障がい者手帳所持者比では3・5%と、障がい者の死亡率が約4・3倍も高かったことがわかる。

 建設コンサルタントの株式会社オリエンタルコンサルタンツ(本社・東京都渋谷区)は、重点事業のひとつとして取り組んできた防災プロジェクトに、UD視点を取りいれるべく株式会社ミライロと業務提携した。「提携の背景には超高齢化社会への対応、16年の障がい者差別解消法施行、そして20年の東京五輪・パラリンピック開催がある」と話すのは、同社関東支店プロジェクト開発部の佐藤貴行さん。

 同社とミライロの協働は13年にさかのぼる。台風26号による伊豆大島の土砂災害直後に、大島町からの要請を受けた同社は、人命保護を目的とした土砂災害ハザードマップと避難計画を策定。町民約8000人に対し高齢者率約35%という大島町の実情を考慮し、UDの観点からミライロの協力を仰いだ。避難所の状況調査において建物のバリアフリーを検証。住民に配布する土砂ハザードマップに付随した資料はUDを取り入れた。翌年の梅雨までに住民の安全を確保せねばならず、工期は実質約2カ月。「短期間で大変な事業でしたが、ハザードマップを手にした方が喜んでくださり、第一回ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)優良賞を受賞するなど、大きな達成感があった」と、防災事業推進室の木村美瑛子さんは振り返る。「超高齢化や海外からの来訪者も増える今後は、ソフト・ハードを含めますますUDに配慮した防災計画が必要とされる」と防災事業推進室長の中尾毅さん。すべての人の命を守るため、これからのまちづくりにはUD視点を欠くことはできない。

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