レポート

2024/03/04

<寄稿>みなさんは里親制度をご存じですか

Tokyo里親ナビ https://tokyo-satooyanavi.com

 こんにちは。里親ナビです。様々な事情で家族と離れて暮らす子どもを自分の家庭に迎え入れ、温かい愛情と正しい理解を持って養育する、子どものための制度です。東京都では養子縁組を目的とせず、一定期間子どもを預かり育てる里親を「養育家庭(里親)」と呼んでいます。私たちは定期的な相談会の開催や「Tokyo里親ナビ」というHPやSNSを通じて、養育家庭を身近に感じてもらえるような情報発信をしています。


どうして里親が必要なの?

 東京都には、親の病気や虐待などさまざまな理由によって親と暮らせない子どもが、約4,000人います。そして、その約9割の子どもたちは、乳児院や児童養護施設などで暮らしています。

 私たちは、こうした社会的養護が必要な子どもたちに、「家庭という居場所」を届けたいと思っています。年々、社会的養護への理解が進み、「里親になりたい」と思ってくださる方が、増えてきています。

 しかし、子どもの必要を満たすには、まだ数が足りません。身近に里親がいないために、実際に里親になったら、今の暮らしがどのように変わるのかを想像することは難しく、一歩を踏み出しかねている方も多いことでしょう。

 里親は、「子どものため」という思いは共通していますが、100人いれば、100通りの考え方や暮らし方があります。

里親は特別な人がするの?

 いきなり小さい子や思春期の中高生と一緒に生活するなんて想像もできないという方もいらっしゃるでしょう。里親は特別な人がすることだと思っている方も少なくないかもしれません。

 東京都には、自分の家族と生活できない子どもが約4000人います。近隣や、お子さんが通っている学校に、養育家庭で生活している、また養育家庭を必要としている子どもたちがいるかもしれません。里親制度を知り、里親子を見守ってくれる方が増えることで、みなさんの地域社会で暮らす里親子が安心して生活できるようになります。

 今日はある里親からの寄稿を通じて、里親たちの貴重な交流の場である「里親サロン」の様子をご紹介させていただきます。 

ある日の「里親サロン」 

 「皆様、ようやく、暑くて忙しい夏休みが終わりましたね。今日は、ほんのひと時ですが、皆様と近況報告をしたいと思います。フリートークです。少人数のグループに分かれて思い切りおしゃべりしてください」 司会者がそういうと、里親さんたちは思い思いに話し始める。

「今、小学校で夏風邪が流行っているんです。昨日まで学級閉鎖でした。今日、ぎりぎり来られてよかった。」

「うちの学校も。インフルエンザやアデノウイルスの子もいるみたいだけど、結局、わからないみたいです。」

「夏休み、どうでした?」

「家にいるとゲームばっかり。暑くて怒る元気もない。」

「2週間くらい、小学生の男の子を預かりました。なかなかしっかりした子でしたよ。」

「実は、この前、実母さんが会いたいと言ってきて。児相から電話がありました。これまで、そんな話、全くなかったからびっくり。実際に会うかはまだわからないけど、なんだか不安。」

などなど。話は次から次へと。話題は尽きない。

 世間話や身近な話題から、里親が必ず向き合わなければいけないことまで。

真実告知について

 大切なことの一つに、「真実告知」というものがあります。真実告知とは単純に「私達は血が繋がっていないんだよ」と話すことではありません。「私達は、血は繋がっていないけど、あなたの事を心から大切に思っている。大事な家族だよ。あなたはここで安心して生活してね。勉強したり運動したり、友達もたくさん作ってね。」ということを、お互いに話し合うことです。

 子供が不安に思っていたら、それを聞いてあげることも大切です。普通の家族ならそんなことしないからやはり特殊なのかもしれませんが、必要な過程です。お互いに信頼関係ができて、生活が落ち着いたころに行います。

 養育家庭は実に様々な大人の集団です。夫婦共働きもいれば、専業主婦家庭もいます。幼い実子と一緒に里子を育てている家庭もいれば、実子が巣立ってから里親になった家庭もいます。実子に恵まれずに里親を選んだ人もいる。夫婦別姓もいます。そんな様々なバックグランドのある方々が集まる場所。そこでしか話せない話だからこそ、サロンはとっても大切な場所なのです。

東京都の養育家庭 U里親さんの場合

 私達は実子に恵まれず、養育家庭になる決意をしました。現在2人の里子を預かっています。2人とも小さい時にそれぞれ委託されました。上の子A君は、児童養護施設から来ました。来たばかりの時は、「どうしてこの家には子供がいないの?」とよく聞き、子どものいる公園に毎日行き、たくさんの子と仲良くなりました。

 このような行動も小さい頃は微笑ましいのですが、小学校に入ってからは、「距離感がなくてちょっと怖い」と言われるようになり、トラブルの原因になりました。毎日のように先生から電話があり、友達に謝りにも行きました。A君は、自分が悪いことをしたと思っていないので、毎回、よく話し合いましたが、A君がしっかり理解するまで長い時間がかかりました。

 また、施設では毎食、管理栄養士の方が作る大変美味しい食事が出されます。残り物もありません。A君がうちに来たばかりの頃、私の作るカレーでさえ、「美味しくない」と言いました。

 私としては一生懸命作ったのでショック。当然、2日目のカレーも食べませんでした。最初のうちは、施設では出なかった菓子パンやお菓子を好んで食べていました。でも、私なりに毎日一生懸命食事を作り、それを毎日食べるうちに私の味になじんでいきました。

 そのA君は現在高校生。高校に毎日、私が作るお弁当を持っていきます。毎日「美味しかった」と言ってお弁当箱を自分で洗うようになりました。これまでの努力が報われて嬉しい瞬間です。

 こんな私のエピソードを笑って話せるのもサロンのおかげです。問題が起きた時はどうしていいかわからず、サロンに行って色々な里親さんに聞いていただきました。すると、「そうそう、うちもあったわ、そういうこと。」と共感してくれたり「A君はやっぱり、愛着障害があるのかな。すぐ友達に抱き着いたりしない? 距離感がちょっと独特なのよね。」とアドバイスしてもらったり。

 いつも帰宅する頃には胸のつかえが下りて、新たな力が湧いていました。私が十年以上養育家庭を続けてこられたのも、このように良い仲間との出会いがあったからだと感謝しています。

色々な形の家族があっていい

 子育てはお母さんのお腹にいるときから始まると言われます。養育家庭の場合は中途からの子育てです。その空白を埋めるのは大変難しい。でも毎日同じ家で生活して同じものを食べて美味しいと感じて色々な話をして、笑ったり、時には喧嘩してそんな時間の中で家族になっていくことができます。

 「色々な形の家族があっていいじゃない」。そんな空気が以前よりも自然に広がっている今の社会を大切に、養育家庭がこれからもっと増えていくことを切に願っています。

(終)


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