レポート
2015/09/26
子どもたちの心の軸、人生の基軸のために
品川女子学院
グローバル化、多様化、超高齢化――。変化に富むこれからの社会で活躍する日本女性の育成を目指すのが、品川女子学院。将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図るスーパーグローバルスクールとして認定され、ITや起業を意識した先進的な取り組みを行っている。
同学院が今年3月に実施したのが「ユニバーサルマナーアカデミックプログラム」。日本ユニバーサルマナー協会代表理事・垣内俊哉氏(㈱ミライロ)を招き、248名の生徒を対象に、多様な人々と接するためのワークショップを開催した。「ユニバーサルマナー(UM)」とは障がい者や高齢者に限らず、妊婦の方や外国の方、ケガをした人など、自分とは違う誰かを認め、受け入れ、さり気なく手助けするというもの。
事前アンケートでは「困っている障がい者や高齢者に声をかけることができない」と答えた生徒は80%以上。しかし、アイマスクや耳栓の着用による当事者体験や、車いすを利用する垣内氏のアドバイスを受けて、多くの生徒は「駅で困っている人を見かけたら、ぜひ声をかけてみたい」と自信を持った様子を同学院教頭の石井豊彦氏は振り返る。
優しさを行動へ。 未来へ
「今も、この社会は優しい」と石井教頭。その言葉を紐解けば「子どもたちや私たち大人も、何とかしてあげたいという気持ちは持ってはいるが、行動につながらなかった」だけであると。善意の行為が、余計なお世話になってしまうのではないか、プライドを傷つけてしまうのではないか…。そのためらいを、垣内氏の実体験や正しい接し方を学ぶことで「踏み出して良いと確信を持てた。生徒たちも私も」と石井教頭は話す。
また、UMは「生徒たちの“軸”の形成に役立つ」。同学院では、「28プロジェクト」と呼ばれる教育方針がある。仕事や結婚、出産という選択肢が生まれるターニングポイントを28歳と設定し、その時にいきいきいと輝く自分でいるために、逆算して「今」を選択するというものだ。そのため、同学院の生徒たちは、漠然と「あの大学へ」ではなく、夢を叶えるために「この大学のこの学部に行きたい」という将来の道筋、夢に向かうための一本の基軸が明確にあるという。
そんな人生の基軸、心の軸の形成にUMも一翼を担うものとして、「これからも継続してUMを学ばせたい」と石井教頭は展望を語る。世界的スポーツの祭典が開催する2020年にはUMを習得した多くの品女生たちが、さらに10数年後には、夢と希望に輝く、優しい日本の女性たちが世界で活躍しているかもしれない。