レポート

2018/07/03

テクノロジーで社会の課題を解決!

年長から高校生までの子どもたちが学ぶ「IT×ものづくり」教室、「LITALICOワンダー」。プログラミングやロボット製作などの技術以上に、自分で考え、何かを形にする経験から得られる力を大切にしている。

少子高齢化の進む日本では、労働力不足などさまざまな社会の課題に対し、AI(人工知能)の活用が期待されています。2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されることも決まりました。「小学生が人気アプリを作って活躍するような時代になってほしい」と語るのは、株式会社LITALICOのCTO(最高技術責任者)岸田崇志さん。前職では超人気ゲームアプリのエンジニアだった岸田さんに、テクノロジーの未来像をお聞きしました。

テクノロジー×社会福祉!何かが起こる予感がした

株式会社LITALICO/
執行役員CTO
岸田 崇志さん

 「インターネットで仕事がしたい」と、大学で情報工学の博士号を取得し、卒業後はネットワークエンジニアとして就職。その後転職し、人気ゲームを次々作る中、岸田さんが感じたのは「チームメイトのアイデアや技術が、ゲームの世界だけで完結してしまうのはもったいない」という思い。「テクノロジーと距離のある業界で何かできないか」と、新天地を探し出会ったのは、障害者向け就労支援事業や子どもの教育事業を展開する株式会社LITALICOだった。決め手になったのは同社が運営する子どものためのプログラミング教室。「新しいものを作るとき、大人はとがったアイデアをどんどん丸くしてしまう。でも子どもは本当に素直で、子どものほうが進化していると感じた。自分自身もチャレンジし続けないと置いてきぼりになる気さえしました」。

 岸田さんが同社で取り組んだのは、発達障害のある子どもを支援するスマートフォンアプリの開発。同社で運営する発達障害のある子どものためのソーシャルスキル&学習教室の現場で生まれたニーズに基づき開発し、子どもたちに体験してもらいながら改良を重ね、2017年4月、発語に課題のある子ども向け「絵カード」をデジタル化したアプリ『えこみゅ』を配信した。「親御さんから『このアプリのおかげで初めて子どもと意思疎通ができた』という声をいただき、今まで作ってきたものとは全く別な感覚のうれしさがあった」と岸田さんは振り返る。現在までにリリースした8タイトルの中から、2017年8月に配信した声の大きさのコントロールを楽しく学ぶアプリ『こえキャッチ』が、「2018 Google Play Awards」の“Best Accessibility Experience”部門で優秀作品のひとつにノミネートされた。「海外でも発達障害のある子どもを支援するツールに高いニーズがあることを実感する一方で、教育や福祉の領域には、まだまだこうした課題を解決する人材が少ないと感じました」。

社会の課題とエンジニアの技術が出会う場をつくる

 そこで岸田さんが次に挑んだのは、課題解決型コンテスト「ソーシャルファイターアワード」の開催。さまざまな社会課題やアイデアと、それをカタチにするテクノロジーのマッチングを目指す。「テクノロジーのチカラで社会福祉の世界を変えるヒーローを作りたい。ゲームを作っている人や、メーカーのエンジニアの方に、ほんのちょっと力を貸してもらうことで、課題が1つ解決できたらいいなという発想です。日曜大工感覚で」と話す岸田さんは、こんなヒントをくれた。「テクノロジーの力で社会の課題を解決するには3つの分野の線引きが重要。テクノロジーで『100%課題解決できるもの』、『一部を助けてくれるもの』、そして全く改善できない、つまり『人にしかできないこと』」。

 テクノロジーは日進月歩。誰もが、世界を変えるプログラムやサービスを作れる時代に私たちはいる。「勉強しないと追いつけないので、今月はめちゃめちゃ勉強しました」と笑う岸田さん、彼こそがヒーローなのかもしれない。


●PROFILE● 岸田 崇志さん

博士(情報工学)。大手ネットワークインテグレータを経て、2009年5月グリー株式会社に入社。 エンジニア兼事業責任者を経てJapanStudio統括部長、開発本部副本部長を歴任。2013年10月同社執行役員に就任。 その後、新規タイトル開発やクリエイター育成に従事。2015年11月株式会社LITALICOに入社、執行役員CTOに就任。

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