レポート
2022/03/14
全ての人生を広げる旅 全ての旅人にやさしい沖縄
長引くコロナ禍で、不要不急だからこそ渇望するものがあることを多くの人が感じているのではないでしょうか。旅もそのひとつ。沖縄県では、コロナ禍の今こそホスピタリティを更新するチャンスと、昨年 10 月には3名の車いすインフルエンサーを招聘(しょうへい)し、マリンアクティビティ体験を実施しました。誰にでもやさしい観光地を目指す沖縄県の、観光バリアフリーの取り組みをご紹介します。
「観光バリアフリー宣言」以降もさらなる進化を続ける沖縄県
沖縄県は2007年に、国内で初めて「観光バリアフリー宣言」を行いました。これからの観光地は、高齢の方、障害のある方、外国の方など、多様なニーズに対応できる質の高いサービスが必要であると考え、いち早く受入体制の整備を推進してきました。
本県では、ホスピタリティの向上のため、県内の観光事業者向けに「観光バリアフリーセミナー」を継続的に開催しています。専門家や当事者を講師としてセミナーへ招き、高齢者や障害者、LGBTQの方、食物アレルギーのある方など、多様な方々への接遇のポイント等の講義を行っております。
また、新型コロナウイルスの感染状況が少し落ち着いた昨秋には、3名の車いすインフルエンサーをお招きし、マリンアクティビティを体験してもらいました。3名が感じた沖縄の魅力、課題を今後の施策に生かし、誰にでもやさしい観光地づくりを更に推進してまいります。
当法人の設立は2002年。障害児のデイサービス事業をスタートし、2004年ころから旅行支援に対応する機会も増えてきました。社会の高齢化にともない、観光客も高齢化するのは自然の流れ。誰しもが安全で快適に沖縄の旅を楽しんでいただけるように、県と協働でさまざまな取り組みをスタートしました。
2007年に那覇空港の到着ロビーに開設した「しょうがい者・こうれい者観光案内所」では、車いすや、ベビーカーの貸し出し、バリアフリー観光の情報提供などを行っています。
到着直後に車いすをお貸しした高齢のお客さまが、帰りには「あまり乗らなかったよ」と車いすを押して返しに来てくださることがあります。旅は何よりのリハビリと実感する瞬間です。高齢の方や障害のある方が、できなかったこと、あきらめてしまったことが「沖縄に行ったらできた!」という体験をお手伝いしたい。沖縄を訪れた全ての人に笑顔で帰っていただきたいという思いは、観光に携わる人だけでなく、沖縄の県民性でもあると私は感じています。
期待に応えるのは当たり前、それを超える体験をご提供するために、「応えるな、超えろ!」を合言葉にバリアフリーの推進を続けています。
しょうがい者・こうれい者観光案内所
車いすで観光できる施設、宿泊施設など、旅行前から旅行中のさまざまな不安を少しでも解消できるよう沖縄のバリアフリー情報を提供。
介護タクシーやレンタカーの手配、透析旅行など、どんなことでもまずは相談を。
バリアフリー情報満載のガイドブック「そらくる」も無料配布中。
住所:沖縄県那覇市鏡水150番地 那覇空港国内線旅客ターミナル1階到着ロビー
TEL:098-858-7760
FAX:098-857-9058
HP:http://barifuri-okinawa.org/BFtourcenter/
沖縄のマリンアクティビティを車いすインフルエンサーが体験!
沖縄県にはさまざまなアクティビティがありますが、高齢の方や、障害のある方も安心して体験し、楽しめるよう、各事業者へのセミナーを実施し、接遇の強化を図っています。2021年10月、3名の車いすインフルエンサーが体験した、スキューバダイビングとシーカヤックの模様と、沖縄レポートをお届けします。
沖縄は2回目です。今回一番感じたのは、高校卒業後7年間留学していたロサンゼルスに似ている、ということ!知らない人でも気さくに声を掛けてくれて、すごく居心地がよかった。スキューバはアメリカで体験して以来約10年ぶりでしたが、スタッフの方たちは皆、車いすの扱いに慣れていて、不安ゼロ。海の中ではお腹を伸ばして立つことができる!この自由な感じを、車いすユーザーの方にはぜひ体験してほしいです。シーカヤックは初めてでしたが、下半身の感覚がない私のためにボートの中にクッションを敷いてくれたり、1人ひとりの身体の状態に合わせて、一緒に考えて工夫や提案をしてくれたことが嬉しかった。やっぱり人ですね。沖縄の人って心の壁がないですよね。
中嶋 涼子(なかじま・りょうこ)さん
1986年東京都生まれ。9歳のときに突然歩けなくなり、下半身不随に。
2005年高校を卒後業後渡米、2011年南カルフォルニア大学映画学科卒業。
2017年から車いすインフルエンサーとして、テレビ、Youtube、講演など幅広い分野で活動中。
車いすトラベラーとして国内外の旅のバリアフリー情報を動画で発信してきましたが、コロナ禍で旅ができなくなり、神奈川から沖縄に移住しました。暮らしてみたら沖縄の魅力は奥が深過ぎた!車いすを理由に入店を断られたことは一度もありません。観光業の人だけでなく出会う人が皆やさしい。「なんでですかね?」って小さな食堂のオバアに聞いたら「ゆいまーるだねえ」と。結い廻る、助け合いの精神が自然に根差してるんですね。そんな人たちが研修を受けてマリンアクティビティもサポートしてくれるんですから最強です。海もきれいだけど、沖縄の人たちは自分たちのすごさに気付いてない。誇りに思っていいですよね。沖縄の魅力を県外に発信するだけでなく、沖縄の人たちにもそのことを伝えていきたいです。
三代 達也(みよ・たつや)さん
1988年茨城県生まれ。
18歳のときにバイク事故で脊椎損傷、四肢麻痺により車いす生活となる。
23歳で初の海外一人旅、会社員を経て28歳で退職し世界一周一人旅を敢行。
2019年『一度死んだ僕の、車いす世界一周』出版。2021年3月沖縄県糸満市に移住。
海が好き、旅が好き、でも飛行機に1人で乗るのは実は今回が初めて。車いす女子として活動し始めたばかりの自分に何ができるのか不安もありましたが、沖縄の皆さんのおかげで、きれいな海で素晴らしい体験ができ「皆に伝えたい!」と心から思いました。ダイビングは歩けなくても泳げなくても全く関係なく、海の中では自由!顔全体を覆うマスクだったので鼻呼吸もでき、安全サポートはもちろん、インストラクターの方の「楽しませたい!」という気持ちがしっかり伝わってきました。旅は世界を広げ、可能性を広げ、次の夢にもつながる!誰もがやさしく支えある社会が、沖縄には日常としてあるように感じました。車いすでも自分らしく働き、自由に旅ができる社会を目指し、沖縄での経験を発信していきたいです。
牧野 美保(まきの・みほ)さん
1988年大阪府生まれ。
5歳のときに転んだことがきっかけで横断性脊髄炎になり車いす生活となる。
2012年一般企業に就職、2021年「車いす女子」としてSNSで発信を始める。
現在は、会社員と並行し、イベントMC、モデルなど、活動を広げている。
★お出掛けに際しては、政府や自治体より発表されている新型コロナウイルス感染対策の基本方針や最新情報をご確認いただき、無理なくご計画ください。
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