レポート

2023/04/11

決定!D&Iアワード2022 受賞企業 ダイバーシティ&インクルージョンを 社会の「あたりまえ」に

東京都立産業貿易センター浜松町館で開催された表彰式にて大賞受賞企業の記念撮影

 

 近年、ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)推進が企業価値を形成する重要な要素になる中、「誰もが自分らしく生きられる社会を“職場”からつくろう」という理念のもと創設されたのが「D&I アワード」です。2月14日、第2回D&Iアワードの表彰式が都内で行われました。多くの企業が参加した表彰式の模様と大賞受賞企業の取り組みを紹介します。

※「D&I」とは「ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity& Inclusion)」のこと。「ダイバーシティ」は“多様性”、「インクルージョン」は“包括”という意味で「多様性を尊重し、活かしていくこと」を指す

 

進化し続けるD&I
今後は企業の生存戦略にも

 D&Iアワードは、D&Iに取り組む企業を認定・表彰する日本最大のアワードです。応募企業のD&Iの取り組みを独自の指標(ダイバーシティスコア・別図参照)で採点し、スコアに応じて認定します。第2回目となった今年度は、昨年度より参加企業数を大きく伸ばし、計547社(グループ連名企業等を含む)が参加するアワードへと成長。表彰式の冒頭、「D&Iは経営会議で話し合われる重要課題になっています。これからは企業の生存戦略にもなるでしょう」と挨拶したのは、主催団体である株式会社JobRainbow(ジョブレインボー)代表取締役CEOの星賢人さん。表彰式には多くの企業が参加し、D&Iアワード大賞4社、D&Iアワード賞12社、今年度より新設された「トップインクールシブカンパニー(TIC)賞」の表彰が行われました。D&Iは進化を続け、多様な人材が働くことが当然のようになった今、個々の違いが障壁にならないよう、企業は誰もが働きやすい「公平性」を保つこと、また労働力の流出を防ぐために「帰属意識」を培うことも求められています。TIC賞は、D&Iに加え、公平性、帰属意識などのスコアが高く、先進的な取り組みを実践する企業に贈られました。

D&Iアワードを主催する星賢人さん

 基調講演では、株式会社Blanket代表取締役の秋本可愛さんが登壇。介護・福祉事業者向け人事支援事業などを運営する秋本さんは「これまでD&Iのテーマに育児と仕事の両立が入っても、介護と仕事の両立が入ることは少なかったのですが、今、多くの企業がこの課題に向き合い始めています。D&Iアワードを通じて、介護と両立できる職場環境が整い、介護をしている人も輝く社会の実現につながると嬉しいです」と語りました。

 表彰式の最後、星さんはこの言葉で締めくくりました。「私自身、性的マイノリティの当事者として、この社会を変えたい思いで2016年に会社を立ち上げました。D&Iのあるべき姿をイメージするとき、名作絵本『スイミー』を思い出します。周りの魚とは一匹だけ色が違う真っ黒な魚のスイミーは、ある日、家族を失い一人ぼっちに。孤独を抱えながらも大海原に出ると、新しい出会いが待っていた。大きな敵と戦うときは、新しい仲間である赤い魚たちに『みんなで大きな魚のフリをしよう。ボクが魚の目になるよ』と言って困難を乗り越えました。違い”は力になる。皆さんの会社の中にもいるスイミーのような存在を活かせる社会づくりを推進し、D&I社会のあたりまえになるように突き進んでいきましょう」。

合計100項目で評価するダイバーシティスコア

 ダイバーシティスコアとは、企業の多様性推進を可視化する指標です。「LGBT」「ジェンダー」「障害」「多文化共生」「育児・介護」の5項目から細分化された合計100項目で企業のD&Iの取り組みを評価します。

 

 

大賞受賞企業の紹介

 

「全員活躍」で誰もが輝く未来へ

大企業部門

株式会社ファミリーマート

サステナビリティ推進部 ダイバーシティ推進グループ

土濃塚友李さん(右) 坪井洋子さん(左)

 企業名の通り、地域社会に寄り添う「家族」的存在を目指す。DI推進は女性活躍推進から始まり、多様性を考慮して現在では「全員活躍」へ。全国各地で活躍する障害のある社員と定期的に交流する機会を持つ。LGBTQへの理解を深めるために社内セミナーを開催し、アライの輪を広げるためレインボーカラーの「ファミチキ袋」や「ラインソックス」を数量限定で展開。育児との両立支援として「面談シート」を活用し、働き方について上司に相談しやすい環境へ。「社員一人ひとりが自ら課題を見つけて考え、行動することで、誰もが輝く未来を目指したい」と土濃塚さんと坪井さんは思いを語った。(※20233月時点)

 

多様なメンバーで「私らしさ」を追求

中小企業部門

平安伸銅工業株式会社

カルチャーグループ グループ長

小島括俊さん

 1952年創業、「突っ張り棒」などの収納用品の企画・販売を展開。多様なユーザーが使う商品をつくるには、メンバーも多様な価値観をもつことが求められる。そのため、大切にしている前提は「私らしい暮らしを広める」「違いは強み」。それらを社外に発信するとメンバー75名の企業規模で、女性が増え、シニアや外国籍のメンバーも在籍する多様な組織に。この前提を社内に定着させるため、社内ラジオ番組などを通じたユニークな手法でメンバーの「私らしさ」を発信。個々の対話による「創造的摩擦」も大切にしている。「今後も中小企業ならではの視点でDIを追求していきたい」と展望を述べた。

 

個々に合わせた多様な制度をつくる

地方企業部門

株式会社ペンシル

代表取締役社長

倉橋美佳さん

 福岡に本社を置き、研究開発型ウェブコンサルティング事業を展開。DI推進においては「全員のための大きな制度ではなく、個々に合わせた多様な制度をつくること」を大切にしている。子育てや介護などで就業時間に制限があるスタッフにレポート作成や調査、チェック作業など非属人的で工数管理しやすい作業を任せることで、コンサルタントはコア業務に集中できる「メイト制度」を導入。シニアや外国籍のスタッフが活躍できる場の創出やLGBTQ+の理解促進に向けたさまざまな取り組みを多数実施。倉橋さんは「スタッフの行動規範の一つ自他の理解者になること”がDI推進を後押しし、企業価値を高めている」と話した。

 

DEIが実現できる土壌づくりに尽力

スタートアップ企業部門

株式会社SAKURUG

執行役員 社長室 広報 兼D&I推進室 室長

木村杏子さん

 「ひとの可能性を開花させる企業であり続ける」をビジョンとする同社では「DEI」を推進。DIに「Equity(公平性)」が加わり、例えば、育児中の社員が働きやすい環境をつくる一方、一部の社員のみが優遇されているように見えないDEIの土壌づくりにも尽力する。トップメッセージは「家族より大事な仕事はない」。言葉通り、男性育休取得率100%、時短勤務メンバーの就業時間の自由化、障害のある子どもをもつ社員も活躍する職場環境などを実現。「働く上での制約を強みに変えたい」と語る木村さんは育児のため時短勤務する執行役員。自身の経験も踏まえ「DEI推進が日本の労働人口減を解消するカギを握る」と力を込めた。

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