レポート

2019/03/06

心も体も温まる 「銭湯」に行こう! <vol.1>

 東京都内には500軒以上もの銭湯があることをご存知ですか?昔ながらのたたずまいを守り続ける銭湯もあれば、最新設備を導入しリニューアルする銭湯も増えています。さまざまな町で地域の人に愛されてきた銭湯は日本が誇る独自の文化。他人同士が裸で交流する公衆浴場としての魅力や役割、訪れる人が快適に楽しめるための工夫などについて、フランス出身の銭湯ジャーナリスト ステファニー・コロインさんに聞きました。


銭湯はありのままの自分になれる場所

銭湯ジャーナリスト ステファニー・コロインさん

 2008年に交換留学で日本に来て、大学帰りに友達に誘われて初めて銭湯に行きました。それが豊島区の妙法湯です。最初に感じたのは「コミュニティ感」。当時まだ日本語を上手にしゃべることができなかった私に、オーナーさんも常連さんも気さくに声をかけてくれて、うれしかったです。フランスには家族以外の人に裸を見せる習慣がないので少し戸惑いましたが、すぐに抵抗感は消えました。なぜなら、周りの人が誰も気にしていないことが伝わってきたから。誰でも自分の体にコンプレックスがあると思いますが、銭湯はそれを忘れさせてくれる。体だけでなく心もデトックスして、ありのままの自分になれる場所です。

 銭湯の魅力はそれだけではありません。建築やアートの視点でも、一軒一軒まったく違う、それぞれが美術館のようだと思いました。昔ながらの古い銭湯も好きですし、最近リニューアルした銭湯はどこも地域の人のためになる工夫がすばらしい。お湯だけじゃなくて人間の温かさ、おもてなしを感じます。絶対になくなってほしくない日本の文化を多くの人に知ってほしくて、写真を撮ってSNSで発信しています。全国の銭湯をこれまでに800軒は巡りました。銭湯は中が見えないので「のれんをくぐるのに勇気がいる」と思っている人も、建物の中の写真を見たら行きたくなりますよね。銭湯イベントやツアーも企画しています。最近は若い人も、遊びのプランに銭湯をプラスする人が増えました。私がガイドして銭湯に行った人はほとんどリピートしてくれます。そしてその人たちがさらに自分の友達を連れて銭湯に行ってくれることがうれしいです。

 2012年に仕事で再来日して、毎日が辛くて、もうフランスに帰りたいと思ったとき、妙法湯を思い出してのれんをくぐりました。4年もブランクがあったのにオーナーの柳澤さんが覚えていてくれて感激しました。銭湯に行くとみんな幸せになりますよ。行けばわかります。


●PROFILE●ステファニー・コロインさん

フランスの大学で日本文学を専攻、2008年交換留学で来日、2012年再来日。現在は銭湯ジャーナリストとして活躍。2015年(一社)日本銭湯文化協会の銭湯大使に任命され銭湯文化の普及に携わる。著書『銭湯は、小さな美術館』(啓文社書房)、『フランス女子の東京銭湯めぐり』(ジービー)。
ホームページ(英語・日本語):https://dokodemosento.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/_stephaniemelanie_/

 

妙法湯(みょうほうゆ)
  • <住所>東京都豊島区西池袋4-32-4(西武池袋線 「椎名町駅」徒歩約2分)
  • <電話番号>03-3957-8433
  • <営業時間>15:30~25:00(最終入場24:30)(日曜14:30~、祝日~24:45)
  • <定休日>月曜日
  • <入浴料>大人(高校生以上)460円/中学生 360円/小学生 180円/未就学児 80円
  • <ホームページ>http://www.angelrock.jp/myouhouyu/

妙法湯の柳澤さんから一言

ステファニーが国に帰って、4年後にひょっこりやって来たときはびっくりしました。日本で仕事を始めたばかりで疲れた顔をしていたけれど、風呂から出てきたら「心が温まりました」って。いいこと言うなあと思いましたね。これからの銭湯は「点」では生き残れない、「面」で考え地域社会と一緒に盛り上げていかないと。後に続く銭湯業界の若い人たちに自分の経験が役立つなら何でも伝えていきたいと思っています。

(写真)妙法湯 店主 柳澤幸彦さん/東京都公衆浴場業生活協同組合理事・広報副委員長、豊島区浴場組合支部長ほか東京都民生委員などを兼務

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