レポート

2023/10/26

<寄稿>「発達障害について学ぼう!」全10回シリーズ
第1回「障碍?障害?障がいって何?発達障がいって何?」

中部学院大学非常勤講師

山内康彦

 もともと障がいは、「障碍」と表記されていました。“碍”とは、妨げる、邪魔をするという意味で、足下に石があって歩きにくいというようなことを表していました。障がいは、周りの状況によって重くも軽くもなるものなのです。しかし、常用漢字で「碍」が使用できなくなると、あて字として「害」が使われるようになりました。ところが「害」という表記に違和感がもつ人が増えてきました。そして、今では「障がい」と表記されることが多くなったのです。現在でも「障害」と表記することがありますが、これは、法律用語と医学用語(病名)の場合です。現在は「障がい」という表記が一般的です。

 「発達障害」についても、本来の意味をよく理解していない方が多いようです。障がいには、“視覚障害”のように『視覚機能に障がいを受けた』という“機能”からとらえる場合と、“発達障害”のように『発達期に障がいを受けた』という“時期”からとらえる場合の二通りがあります。つまり、「発達障害」は、18歳までに何らかの障害を受けた場合で、18歳以降に何らかの障害を受けた場合は、「中途障害」と言います。

 しかし、読者の皆様の多くは、「発達障害」というと、自閉症や学習障害などを連想さ

れる方が多いと思います。それは、発達障害を「自閉症・・・学習障害、注意欠陥多動性障害」とする定義が、発達障害者支援法で示されており、わが国独自の法律・行政用語として狭い意味で使われているからなのです。

 「中途障害」と「発達障害」は、時期だけの問題ではなく、実は、支援のあり方もまったく違うのです。中途障害に対しては、リハビリテーションを行います。これは、できていたことが、できなくなったことへの指導です。成功体験をイメージできている人への支援となります。しかし、発達障害に対しては、リハビリテーションではなく、ハビリテーションを行います。できた経験がない、成功体験がわからない人への指導になります。成功体験がイメージできないので、中途障害に対するリハビリテーションに比べて、より多くの支援が必要で、支援の質も変わってくるのです。

 今、流行の児童発達支援事業や放課後等デイサービス事業の児童管理発達責任者や指導員に対して、子どもたちへの指導経験が問われるようになったのも、このことからです。

 

山内康彦

中部学院大学非常勤講師
学校心理士SV・ガイダンスカウンセラー
(一般社団法人)障がい児成長支援協会 代表理事・元日本教育保健学会理事

山内康彦

1968年3月30日生まれ 岐阜県
 専門は特別支援教育と体育。岐阜県の教員を20年務めた後、坂祝町教育委員会で教育課長補佐となり、就学指導委員会や放課後子ども教室等を担当。その後、岐阜大学大学院教育学研究科(教職大学院)で学び、小中高・特別支援学校の専門職修士となる。その後、学校心理士やガイダンスカウンセラーの資格も取得。私立小学校の勤務を経て、現在は(一般社団法人)障がい児成長支援協会の代表理事を勤めながら、学会発表や全国での講演会活動、教職員等への研修講師を積極的に行っている。現場目線で、具体的な解決策を提案する講演会は各地で好評を得ている。2020年3月には、岐阜大学大学院地域科学研究科を修了。本年度、学校心理士スーパーバイザー(SV)資格取得。著書には「特別支援教育って何?(WAVE出版)」「体育指導用教科書(学研)」「特別支援が必要な子の進路の話?(WAVE出版)」等多数あり。

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