レポート

2023/11/27

<寄稿>「発達障害について学ぼう!」全10回シリーズ
第2回「特別支援学校や特別支援学級、通級の利用者が急増している理由」

中部学院大学非常勤講師

山内康彦

 私が教員になった平成2年(約35年前)には、特別支援学級(当時は、「特殊学級」と言われていた。)は、まだ少なく、通常の学校の中でも特別支援学級がない小中学校が多くありました。

 

 では、特別支援が必要な子どもたちが少なかったのかというと、そういうわけではありません。読み書きが苦手など、学習についていけない子や、授業中も教室をウロウロする落ち着かない子は何人かいました。しかし、特別支援に関する認知は低く、保護者の理解も十分にありませんでした。特別支援学級は「一部の特別な人が行く所」という認識だったと思います。少なからず教員の中にもそのような意識はあったように思います。

 

 文部科学省「特別支援教育資料(令和2年度)」P.43によると、全国の小中学校の特別支援学級の教室数は、平成5年度の2万1619教室から令和2年度には、6万9478教室と29年間の間に約3.2倍に増加しました。更に特別支援学級の在籍数については、平成5年度の6万9250人から令和2年度には30万540人と約4.3倍に増加しました。

 

 また、通常の学級に在籍している発達障害の子どもの割合は、8.8%と前回10年前の文科省の調査に比べて大幅に増えています。不登校の数も小学校で77人に1人、中学校については20人に1人と公表されました。もう、特別支援は特別なものではなくなっているのです。

 

 このように特別支援が必要な児童生徒が大幅に増えた背景には、特別支援に関する教育環境が整備されたこと、特別支援学校や特別支援学級のよさが認知されてきたことなど様々な理由があげられていますが、ここ数年の増加については、「コロナウイルスの流行による学校の休校」が大きく関係していると考えます。

 

 今までは、当たり前に学校に通っていた児童生徒の中にも「勉強が嫌い」「集団が苦手」など、学校嫌いが少なからず存在していました。しかし、「みんなが当たり前に毎日通学している」「学校に行かないと家で叱られる」といった理由で、ただ漫然と通っていただけなのです。しかし、3年前に事態は大きく変わりました。

 

 コロナウイルスの流行により、突如として「学校に行かなくてもいいよ」となったのです。休校当初は、プリント等の活動が考えられましたが、朝からテレビやYouTube、寝起きから着替えることなく、お菓子にゲーム。このダラダラな生活が半年も続いて、身体に染みついてしまったのです。

 

 特別支援が必要な子どもたちの特性の一つに「依存性の強さ」があります。好きなことや興味のあることに流されやすいのです。学校が再開されても、一度乱れた生活を元に戻す“気持ちの切り替え”ができずに多くの子どもたちが苦しんでいるのです。

 

 そして、不登校になってはじめて通院して診断名がつくケースが増加しているのです。大切なことは“早期からの療育”子どもの異変を感じたら、まず専門機関に相談してください。

山内康彦

中部学院大学非常勤講師
学校心理士SV・ガイダンスカウンセラー
(一般社団法人)障がい児成長支援協会 代表理事・元日本教育保健学会理事

山内康彦

1968年3月30日生まれ 岐阜県
 専門は特別支援教育と体育。岐阜県の教員を20年務めた後、坂祝町教育委員会で教育課長補佐となり、就学指導委員会や放課後子ども教室等を担当。その後、岐阜大学大学院教育学研究科(教職大学院)で学び、小中高・特別支援学校の専門職修士となる。その後、学校心理士やガイダンスカウンセラーの資格も取得。私立小学校の勤務を経て、現在は(一般社団法人)障がい児成長支援協会の代表理事を勤めながら、学会発表や全国での講演会活動、教職員等への研修講師を積極的に行っている。現場目線で、具体的な解決策を提案する講演会は各地で好評を得ている。2020年3月には、岐阜大学大学院地域科学研究科を修了。本年度、学校心理士スーパーバイザー(SV)資格取得。著書には「特別支援教育って何?(WAVE出版)」「体育指導用教科書(学研)」「特別支援が必要な子の進路の話?(WAVE出版)」等多数あり。

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