レポート

2024/01/20

<寄稿>「発達障害について学ぼう!」全10回シリーズ
第3回
「知能検査の種類と読み取り方の注意」

中部学院大学非常勤講師

山内康彦

 障害者手帳の発行や特別支援学級への転籍時に“知能検査”の結果は大切な情報となります。しかし、知能検査の結果が全てではないこと、1回の検査で決めつけてしまうことは、よいとは言えません。子どもの実態は、知能以外にも「適応能力」など様々な視点から把握する必要があるからです。また、その時の子どもの状態で結果が大きく上下することがあるからです。・・・・ということで、今回は“知能検査”にスポットをあててお話をします。

 

 「知能検査」といっても様々な種類があります。主に「田中ビネー」や「WISC」、「新版K式」といったところが、一般的に使われます。「田中ビネー」は、主に障害者手帳(療育手帳)の発行時によく使われます。他の知能検査の結果よりIQ(知能指数)が高く出やすいことに注意が必要です。「WISC」は、小学校入学時、それ以降によく使われ、学校の学習や活動に適応できるかどうかを調べる時によく使われます。他の検査より難しく、IQが低く出やすいことに注意が必要です。例えば、WISCの結果でIQが低いため、知的学級に転籍したが、その後、障害者手帳(療育手帳)取得時に田中ビネーで検査をしたらIQがWISCより高く出て、手帳が出ない。結果として中学卒業後に特別支援学校高等部に進学できなかったというようなことがよくあるのです。山内の経験上WISCに比べて田中ビネーは、IQが5~10ぐらい高くなることがよくあります。特に境界知能の子は注意が必要です。「新版K式」は、全ての年齢に対応していますが、未就学の乳幼児にも行えることが特徴です。一般的に、未就学までは、新版K式、小学校以降はWISC、手帳の発行時は田中ビネーといった利用の仕方が多いようです。時々、「K-ABC」という検査を行う専門機関もあります。「継時処理」や「同時処理」といった力を調べることができます。このように、知能検査といっても様々な種類があり、本来はその目的に応じて使い分けることも必要です。また、問題を覚えてしまうと言うことから、一度行った検査は続けて行うことが出来ません。1年~2年間は空けることが推奨されています。そこで、「バッテリー検査」といって2つの異なる知能検査をすることを山内はオススメします。他の検査であれば、1年以上間を空けることは必要ありません。また、“本当に知能検査の結果が正しいのか?”を検証するには、2種類の検査をすることは有効に思います。

 

 知能検査を行うとどうしても結果として表れる数値(IQ)が気になるものです。しかし、本来知能検査というものは、検査結果からお子さんの特性を理解し、日々の指導や支援に活かすことが目的です。IQの高い低いだけを聞くのではなく、保護者として、指導者として、具体的にどのようにお子さんと接していくのかについて十分説明をうける機会を設けて欲しいと思います。各学校に配置されいるスクールカウンセラーの活用は有効で効果的です。

山内康彦

中部学院大学非常勤講師
学校心理士SV・ガイダンスカウンセラー
(一般社団法人)障がい児成長支援協会 代表理事・元日本教育保健学会理事

山内康彦

1968年3月30日生まれ 岐阜県
 専門は特別支援教育と体育。岐阜県の教員を20年務めた後、坂祝町教育委員会で教育課長補佐となり、就学指導委員会や放課後子ども教室等を担当。その後、岐阜大学大学院教育学研究科(教職大学院)で学び、小中高・特別支援学校の専門職修士となる。その後、学校心理士やガイダンスカウンセラーの資格も取得。私立小学校の勤務を経て、現在は(一般社団法人)障がい児成長支援協会の代表理事を勤めながら、学会発表や全国での講演会活動、教職員等への研修講師を積極的に行っている。現場目線で、具体的な解決策を提案する講演会は各地で好評を得ている。2020年3月には、岐阜大学大学院地域科学研究科を修了。本年度、学校心理士スーパーバイザー(SV)資格取得。著書には「特別支援教育って何?(WAVE出版)」「体育指導用教科書(学研)」「特別支援が必要な子の進路の話?(WAVE出版)」等多数あり。

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