連載コラム

2019/10/07

垣内俊哉「106cmの視点から」

アイデアを形にすること

 小さな頃から、アイデアを形にすることが好きでした。初めての発明は、小学生の夏休みの課題。起伏の多い田舎街に住んでいたので、冬に雪が降ると、私は家から出ることができませんでした。私だけではなく、私と同じ車いすユーザーである弟も、移動に困っていました。そこで、雪道や砂利道を移動できるよう、車いすの前輪に取り付けるスキー板を発案しました。元々は私や弟のためのアイデアでしたが、「めずらしい!」と評価され、若者の発明に贈られる世界的な賞をいただきました。自分の経験に基づいた発想が、多くの人の役に立つのだと思い、嬉しくなりました。

 この夏、「ミライロID」という障害者手帳アプリをリリースしました。私自身、かさばる紙の手帳を不便に思い、「あったら良いな」と願い続けてきたサービスです。先日、個人タクシーに乗った時のことです。私は、うっかり手帳を忘れてしまったことに気づきました。運転手さんに「手帳の現物は無いんですが、これはあります」とアプリの画面を見せたところ、運転手さんが「わかりました!大丈夫ですよ」と言ってくれました。まだまだ発展途上のミライロIDですが、私自身が偶然、利便性を体験できたことが、今後の改善の大きなエネルギーになっています。


●PROFILE● 垣内 俊哉
1989年生まれ。岐阜県中津川市出身。2012年立命館大学経営学部卒業。在学中2010年に株式会社ミライロ設立。

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