連載コラム

2019/10/31

垣内俊哉「106cmの視点から」

日常のバリアを解消し想像する防災

 台風19号が日本列島に接近した時、ニュース番組の公式ツイッターが、すべて平仮名で書いた注意喚起を発信しました。これは、平成7年阪神淡路大震災で、日本語も英語も十分に理解できない外国人が困ったために、生まれた工夫です。平成29年九州北部豪雨では、視覚・聴覚障害者が十分な情報を得られなかったために、現在は厚労省が、避難所にプラカードやホワイトボードを用意するよう呼びかけています。痛ましい災害が起きる度に、実際に困った当事者の声が上がり、防災のバリアフリーは改善されました。

 一方で、まだまだ想定外は起こります。今回はホームレスの方やペット連れの方の安全な避難が、想定されていませんでした。避難所など人が多いところでパニックになりやすい、精神・知的障害のある人にも、不安が残ります。問題の発生後に改善するだけでなく、先に当事者の声を取り入れ、有事を想像しなければなりません。解決策の一つは避難訓練ですが、障害者が訓練に参加する機会は少ないのです。「自分が訓練に参加することで迷惑をかけるから」という悲痛な声も聞きました。例えば、共に働く障害のある人へ災害時に困ることを聞いておく、困った時に声をかけあうなど、日常の小さなバリアを解消することも、大切です。


●PROFILE● 垣内 俊哉
1989年生まれ。岐阜県中津川市出身。2012年立命館大学経営学部卒業。在学中2010年に株式会社ミライロ設立。

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