連載コラム

2019/12/09

垣内俊哉「106cmの視点から」

障害は個性?

 自閉症のお子さんを育てる、お母さんに取材した記事を、たまたま目にしました。そのお母さんは周りから何度も「障害ではなく、“個性”として考えたら良いんじゃないの」と励まされ、その度に、辛い思いをしたと言います。私も同じ経験があったことを思い出しました。中学生の時に「歩けないことは、垣内くんの個性だよ」と先生から言われ、強烈な違和感を覚えました。歩けないという障害を「皆と同じ、個性の一つ」で片付けていたら、不真面目だった僕は勉強をしなかったでしょう。人付き合いが苦手だった僕は部活に参加しなかったでしょう。障害のある自分の、弱点やコンプレックスを変えたかったから、いつも、もがいていました。学校を退学し、手術を受け、リハビリを続けました。やりきったなと思えるまで努力をしたから、障害があることを少しずつ、受け入れられるようになりました。結局のところ私にとって、障害は、障害でした。でも障害は、本人が持っているわけでも、抱えているわけでもなく、社会の環境や仕組みに存在しているだけです。存在している以上、障害のある人が不安なく過ごすための工夫が必要です。いつかその工夫が当たり前になった時、私の障害は、障害ではなくなるのかもしれません。


●PROFILE● 垣内 俊哉
1989年生まれ。岐阜県中津川市出身。2012年立命館大学経営学部卒業。在学中2010年に株式会社ミライロ設立。

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