インタビュー
2021/06/30
もっと知ってほしいヘルプマークについて
認定NPO法人 プール・ボランティア
理事長 岡崎 寛 さん / 事務局長 織田智子さん
ヘルプマークとは、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方など、外見からは分からなくても配慮や援助が必要な方のためのマークです。ヘルプマークを持っている方を交通機関で見かけたら席を譲ったり、困っているようであれば声を掛けることが大切です。今回は、認定NPO法人プール・ボランティアの理事長 岡崎寛さん、事務局長 織田智子さんに、ヘルプマークに関する取り組みと、そこに込めた思いを伺いました。新型コロナウイルスの影響で人と距離を取ることが求められる今、ヘルプマークの意義を改めて皆さんと考えることができればと思います。
障害のある人も気軽に公営プールに行かれるように
「プール・ボランティア」の設立は1999年5月。文部科学大臣認定の水泳教師、日本赤十字社の水上安全法・救急法指導員、ライフセーバーなど、「水」の専門家が大阪で活動を始めた。「自分たちの大好きな水泳を通して、みんなが楽しくなればという思いで」と織田さんは当時を振り返る。「プールの中ならどんとこい来い!」という岡崎さんの言葉通り、高校生から80代まで約170人のボランティアが、原則としてすべての障害者を受け入れている。
もうひとつの大きな特徴は、障害者専用プールではなく一般の市民プールを利用することだ。「どんな自治体にも障害者専用プールはあるけれど、自宅から近いとは限らない。近所のプールなら、障害のある人も気軽に行ける」と織田さん。「一般の利用者の方の理解を得ながら、トラブルがあったとしても、それを乗り越えるプロセスに意義がある」と岡崎さんは言う。
ヘルプマークを見掛けたら「味方だよ」と伝えてほしい
同法人が「ヘルプマーク・スイムキャップ全国無償配布事業」を開始したのは2018年。「自閉症の子がヘルプマークを付けて一人で電車に乗っているのを見掛けて、このマークすごくいいなと思ったんです」。織田さんがそう感じた背景には、一緒にプールに入る自閉症児たちの存在があった。「初めて自閉症の子とプールに行ったとき、うれし過ぎて奇声を上げたり走り回ったり。車いすの方の場合は一般の方も『手伝いましょうか』と声を掛けてくれるのに、自閉症の子たちと行ったときは『マナーが悪い』という冷たい視線があって。プールの中にもヘルプマークがあったらなあと」。そう考えた織田さんは「スイムキャップに付けたらどうだろう」と岡崎さんに相談した。「ええやん!作ってみよ」という理事長の言葉に背中を押され、織田さんはすぐに東京都に申請書を提出。しかし、これまでヘルプマークを他のアイテムにプリントした事例はなかった。どうしてもスイムキャップにプリントしたい理由、それを必要とする人たちについて説明すると、東京都から了解が得られた。織田さんのひらめきからわずか3カ月で300枚の「ヘルプマーク・スイムキャップ」が完成。SNSで無料配布を告知すると全国から希望が殺到した。「特に多かったのは聴覚障害の方でしたね」と岡崎さん。外見からはわからない障害などで配慮を必要とする多くの人たちが、安心して水泳を楽しめるようにと、ヘルプマーク・スイムキャップを発送した。
「ただ大事なことは、全国のプール監視員さんがヘルプマークを知らないと意味がない」と岡崎さん。同法人では、ヘルプマークの啓発チラシとポスターを制作し、全国のプールに配布している。「このマークを見掛けたら『いつでも手伝うよ、味方だよ』と気軽に声を掛けてほしい」と織田さん。「ヘルプマークが日本から世界に広がり、いずれはヘルプマークがいらないくらい、思いやりが当たり前の社会になってほしい」と、岡崎さんはさらなる未来を描く。
同法人では、コロナ禍が落ち着いたら東京ほか全国での活動を準備中だ。「各都道府県にプール・ボランティアの姉妹校ができるよう、私たちの経験を伝えていきたい」と織田さんは展望を語る。
ヘルプマークは、導入自治体により配布方法が異なります。詳しくは、お住まいの自治体(都道府県や市区町村)のホームページ等でご確認ください。
プロフィール
障害者も健常者も同じようにプールを楽しめる社会を目指すボランティア団体。障害児や高齢者への水泳指導、ヘルプマーク・スイムキャップの配布、プールリハビリ事業なども行う。ヘルプマーク・スイムキャップについて詳しくはこちら >>>https://www.pool-npo.or.jp/swimcap/index.html