インタビュー

2023/02/22

2025年のデフリンピック東京大会まで1000日! デフバレーボールを知ろう、応援しよう

デフバレーボール日本代表女子チーム監督

狩野美雪さん

 2025年1115日〜26日、聴覚障害のあるアスリートが出場する国際スポーツ大会「第25回夏季デフリンピック(Deaflympics)」が東京で開催決定。同大会を盛り上げるべく、去る12122日、大田区総合体育館で行われた V.LEAGUEの試合にて、デフリンピックや競技種目の一つ「デフバレーボール」のPRイベントが行われました。大会開催まで1000日前の本日、デフバレーボール日本代表女子チーム監督の狩野美雪さんへのインタビューとともに、PRイベントの模様をお届けします。

※デフ(Deaf)とは、英語で「聴覚障害がある人」という意味 

※V.LEAGUEは、日本のセミプロバレーボールリーグ

「デフリンピック」とは

「デフリンピック」は聴覚障害のある選手が出場する、4年に一度開催される国際スポーツ大会です。第1回大会は1924年にフランスで開催されました。デフリンピックに参加できるのは、音声の聞き取りを補助するために装用する補聴器などを外した裸耳状態で聴力損失が55デシベル以上の聴覚障害者で、各国の聴覚障害者のスポーツ協会に登録しているアスリート。また、公平性の観点から、選手たちは競技会場に入ったら、試合や練習の際、補聴器等を装用することは禁止されています。2025年の東京大会はデフリンピック100周年記念大会で、日本初開催。21競技の実施が予定され、7080カ国・地域から約3000人の選手が出場予定です。

※デフリンピックマークに関する一切の知的財産権は、国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)が管理しています。

ルールは一般のバレーボールと基本同じ

 デフバレーは、一般のバレーとルールは基本同じです。ただし、例えば、試合中に審判が笛を吹いても選手には聞こえないので、ハンドサインをしたり、ネットを揺らして気づいてもらうなど、主に視覚から必要な情報を得られるような工夫がされています。

 女子日本代表選手は、全国各地の学校のクラブやクラブチームに所属している学生や社会人を123人集めて、強化合宿などを経て大会に臨みます。一口に聴覚障害と言っても、障害の原因や育ってきた環境、聴力は個人差があります。補聴器を付ければ普通に会話ができる人がいれば、第一言語が日本手話という人もいるなどコミュニケーション方法も多様です。私は耳が聞こえるので、選手一人ひとりの状況に応じて大事な話は手話通訳士を介して、また、自分でもある程度の手話を覚え、選手たちとコミュニケーションを取っています。何を話しているのか相手に伝わるように、大きく口を開けてはっきりと話すことも心がけています。

 一般のバレーボールはかけ声や手を叩く音に反応して選手が動く場面が多くありますが、デフバレーではそれができないので、事前に動き方のルールを決めたり、アイコンタクトなどで連携します。ときに動きがかみ合わず、選手同士の体がぶつかることもありますが、ある程度、それは仕方がないことだと受け入れて臨んでいます。

デフリンピック・ブラジル2021で戦う選手たち 写真/日本デフバレーボール協会提供

デフリンピックで金メダルを目指す

 現在の代表選手は、明るい性格で、ひたむきに頑張る努力家が多いです。指導の際、私や手話通訳士の手話や口の動きを見逃すまいと、まっすぐな眼差しを向けてくれます。そのように真剣にデフバレーに取り組む選手たちを見ていると、応援したい気持ちでいっぱいになります。今、彼女たちは個々にレベルを上げ、強いチームへ成長しています。2017年のデフリンピック・サムスン大会(トルコ)では金メダルを獲得、デフリンピック・カシアスドスル大会2021(ブラジル)ではコロナの影響で準決勝棄権(4位)になってしまいましたが、そのときの悔しい思いをバネに25年の東京大会では金メダル獲得を目指しています。地元東京開催になったことで、選手たちのモチベーションは格段に上がっています。デフバレーでも海外の選手は身長が高いので、スパイクは強烈です。私たちは守備に力を入れ、何度攻撃されても粘り強くレシーブで拾って点を取り、勝利を掴み取りたいです。

日本代表選手の迫力あるプレーに注目したい 写真/日本デフバレーボール協会提供

 試合の勝利はもちろん大切ですが、私は選手たちに「デフバレー日本代表として戦うことは、日本の聴覚障害者代表でもあることを意識してほしい」ということも伝えています。一般的にはまだまだ知られていないデフバレーの知名度が上がることで、社会において聴覚障害のある人たちへの理解も深まると思っています。また、将来的に聴覚障害のある子どもたちが「デフバレー選手になりたい」と思えるような憧れのスポーツになることも目標にしています。そのために選手もスタッフも日々全力で取り組むとともに、今後は皆さんに見学や体験会などを通じてデフバレーの魅力に触れていただく機会を増やしていきたいと考えています。

◆V.LEAGUEでデフバレーPRイベントを開催! イベントの模様はこちらから

プロフィール

かのう・みゆき/大学卒業後、現・久光スプリングスなどのチームに所属。2008年日本代表として北京オリンピック出場。現役引退後、2011年よりデフバレーボール日本代表女子チーム監督。2013年デフリンピック・ソフィア(ブルガリア)で銀メダル、2017年デフリンピック・サムスン(トルコ)では4大会ぶりの金メダル獲得に導いた。

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