インタビュー

2022/11/30

ともに生きる 大きな一歩へ

山本そよかさん(右) ヨリコさん(左)

111日「東京都パートナーシップ宣誓制度」スタート!

性的マイノリティ(LGBTQ+)のカップルの関係を公的に証明する制度として、全国の自治体で導入が広がる「パートナーシップ制度」。今月1日から、東京都においても制度運用が始まりました()。この特集では本制度の概要紹介とともに、「東京都にパートナーシップ制度を求める会」を立ち上げ、制度実現に尽力した山本そよかさんとパートナーのヨリコさんへのインタビューをお届けします。

※都内16市区で同様の制度が導入済み(202210月末時点)

 

みんなの力で制度導入へ

―1日から制度運用が始まりました。そのご感想と、これまでの活動についてお聞かせください。

山本:私たちも申請が無事受理されて証明書が交付されました。本当に嬉しいです!私自身、これまでもLGBTQ+の啓発活動をしてきましたが、コロナ禍で性的マイノリティの方が病院で亡くなる際に、その方のパートナーが「家族」と認められず最後に立ち会えなかったという話を聞いて涙が止まらなかった。すぐにでも東京都に制度をつくってほしいと思い、先輩や仲間、都議会に相談し、20211月から活動を始めました。

 まずは制度の必要性を訴え、オンラインで署名を集めました。最終的に1万9千筆以上の署名が集まり、都議会に請願書を、都知事に要望書と署名を渡すことができました。多くの方が動いてくださったおかげで、今年6月に制度導入が決定しました。

ヨリコ:私は山本の10年来のパートナーで、一緒に暮らしています。会のメンバーではありませんが、いつも話は聞いていました。今回の活動は山本にとってすべてが初めてのこと。多様なステークホルダーと相談しながら一歩一歩進めていたのが印象的でした。

―お二人の関係が公的に認められた今のお気持ちは?

山本:私は小学校高学年の頃から自分が性的マイノリティだと自覚していたので、将来に希望を持てず「幸せになれないのでは」と思いながら生きてきました。そこが少しでも解消できる、大きな一歩になったと思います。

ヨリコ:多くのカップルは35年くらい交際すると「この人が人生のパートナーだ」と結婚を意識するようになると思うんです。でも、私たちにはまだ「婚姻」という選択肢はないので、二人の関係に節目のようなものがなかった。今回の制度によって、ようやく「私たちは家族」だと思えるようになりました。

 

カミングアウトがしやすい社会を

―お互いに、どんな存在ですか?

ヨリコ:これからも何をやるにしても困難はあると思うので、共に乗り越えていく大事なパートナーです。

山本:性格も得意なことも違う。だから尊重、尊敬できるし、足りないところは補い合える存在です。

ヨリコ:いつも「二人で一人だよね」と言い合っています。

―今後の活動についてお聞かせください。

山本:団体の活動は一区切りですが、性的マイノリティとして生きる上での“生きづらさ”は必ず解消させたい。まだ日本では認められていない「同性婚」の実現にも寄与できたらと思っています。

―性的マイノリティの方たちが暮らしやすい社会にするために、私たちにできることは?

ヨリコ:私たちは職場でカミングアウト(※)できましたが、実際には言えない人がほとんど。だから、普段から性的マイノリティをからかうようなことは言わないでほしいし、もしそういう言葉を聞いたら「適切でない」と言っていただけると嬉しいです。もう一つは、今回の制度によって、同性カップルも事業者の福利厚生や家族割のようなサービスが受けられるようになりましたが、これから制度改定する事業者もあることでしょう。私たち当事者もサービス適用の有無を確認していきますが、ぜひ皆さんからも「このサービスは性的マイノリティの人にも適用される?」と事業者に聞いていただけると、それは一つの「声」や「呼びかけ」となり、社会が変わるきっかけになると思います。

山本:カミングアウトできず、周囲に嘘をついて生きねばならないのは辛いことです。私はカミングアウトできて、本当に気持ちが楽になりました。皆さんの身近にも性的マイノリティの方は必ずいると思って、私たちの心に寄り添っていただけることがカミングアウトしやすい土壌を育て、誰もが暮らしやすい社会につながると思います。

 ※これまで公にしていなかった自らの出生や病状、性自認や性的指向等を表明すること

 

2022年10月12日付 東京新聞朝刊掲載
「東京都パートナーシップ宣誓制度」受付開始日であった10月11日、オンライン申請後、記者会見に臨んだ山本さんとヨリコさんら

「東京都パートナーシップ宣誓制度」

・「パートナーシップ関係」とは
双方又はいずれか一方が性的マイノリティ(LGBT等)であり、互いを人生のパートナーとして相互の人権を尊重し、日常の生活において継続的に協力し合うことを約した二人の関係のこと。
・制度の概要
双方が成年、いずれか一方が都内在住・在勤・在学などの要件を満たすパートナーシップ関係にある二人からの宣誓・届出を東京都が受理したことを証明(受理証明書を交付)する制度。全国の自治体で初めて届出から交付まで原則オンラインで実施。※本制度は婚姻とは異なり、法律上の効果は生じない 
・制度が始まると、何が変わる?
パートナーシップ関係にある二人が、日常生活の様々な場面での手続きが円滑になるほか、新たにサービスが受けられるよう取り組みが進められている。
(取り組み例)
・都営住宅への入居申込
・職場において社員のパートナーにも配偶者や事実婚の相手方が対象の 福利厚生を適用
・病院での診療情報や面会の機会などをパートナーへ提供
・携帯電話などの家族を対象とした割引の適用 など 
詳しく知りたい方は東京都総務局人権部HPまで 

プロフィール

「東京都にパートナーシップ制度を求める会」代表 山本そよかさん(右) 山本さんのパートナー ヨリコさん(左)

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