インタビュー

2021/09/29

笑顔で自分らしく暮らせる社会を

ライオン株式会社 ビジネス開発センター ビジネスインキュベーション ご近所シェフトモ事務局

廣岡 茜 さん

長引くコロナ禍で在宅時間が増えたとはいえ、共働きの子育て世代にとって平日の夕飯は時間との闘い。時短レシピや便利な調理器具などが話題になる中、今年2月、大手生活用品メーカー ライオン株式会社が新規事業をスタートしました。それは、近所の飲食店に夕飯づくりをお任せするテイクアウトサービス「ご近所シェフトモ」。起案者である同社の廣岡茜さんに、開発ストーリーを聞きました。


共働きの子育て層と近所の飲食店をつなぐ

 ライオンは「より良い習慣づくりで人々の毎日に貢献する」というパーパス(存在意義)を掲げ、皆さまにさまざまなご提案をしております。そのなかで「より良い食習慣づくり」の一環として、2021年2月「ご近所シェフトモ」というサービスをスタートしました。
 これは、主に共働きの子育て層とご近所の飲食店をつなぐテイクアウトサービスです。2019年に社内の新価値創造プログラムにアイデアを応募し、2020年の実証実験を経て、新事業として始動しました。注文・決済はLINEを利用し、事前に配信される翌週の献立を金曜日までに注文すれば、当日はお店に取りに行くだけ。現在は東京を中心に加盟店は約50店、登録会員数は6000人を超えました。

思いがけなく生まれた地域の自然な互助関係

 起案背景としては、私自身が共働きの子育て中で、夫は出張が多く、ほとんどの家事がワンオペレーション。保育園に子どもを迎えに行き、スーパーで買い物をするだけで30分。帰宅してそこから夕飯の支度。これをずっと続けるのは無理だ!と思い、2017年に「料理をやめる」と宣言したんです。代替案として、保育園の前にある飲食店さんに「我が家の夕飯を作ってもらえませんか」とお願いしたことが、「ご近所シェフトモ」の始まりです。その話を保育園のママ友にしたら「うちもお願いしたい」と広がって、このサービスを必要とする人はたくさんいると確信しました。
 テイクアウトやデリバリーなど既存のサービスもありますが、それらは週末のスポット利用向き。日常に寄り沿うサービスとして、個人経営の飲食店さんに、おいしくバランスのよい主食と副菜を作ってもらうことにしました。
 ご利用いただいている方からは「時間と気持ちの余裕が生まれ、子どもの話を笑顔で聞ける」、「仕事帰りにお店の方から“お疲れ様”と声を掛けてもらい涙が出るほどうれしかった」という声もいただいています。また飲食店さんからも、「“昨日のおかずおいしかった”など、生の声が聞けることが励みになる」と言っていただけるなど、地域で自然な互助関係が生まれています。

主菜プラス副菜2品の献立例。時にはおまけの一品や店長の手書きメモが付くことも

家族の笑顔と自分を大事にする時間を

 今後は、自治体や商店街などとも連携し、共働き世帯が多く住み、個人経営の飲食店の多いエリアにサービスを拡大し、2025年までには全国展開を目指しています。子育てファミリーを想定してスタートしましたが、単身者やシニアの方にもご利用いただけていることがわかりました。より幅広い層に向けサービスの充実を考えています。今は、自宅の近所ですが、職場の近所にシェフトモがいてもいいですよね。
 誰にとっても一日は24時間。どんなに忙しくても自分を大事にできる社会を目指したい、それが「ご近所シェフトモ」の理念です。家族も自分も笑顔でいるために、手放せる家事はプロに任せる。それを引き取れるようなさまざまなサービスを、ライオンだからこそできることを、これからも考えていきたいと思っています。


ご近所の食卓を支えるシェフの声

KAZUSAYA店主夫妻(芝公園)

今までお客さまのほとんどが近くにお勤めの会社員の方々でしたが、シェフトモによって地元ファミリーという新しい客層ができました。保育園帰りのお客さま親子と出会うことで、地域とつながり、お役に立っている気持ちになります。

三番船ハ印店長(浜松町)


他のデリバリーサービスは、通常営業に影響しそうで悩んでおりましたが、シェフトモは前週に注文が確定するので導入を決めました。最初は「店の味」と「家庭向け献立」の違いに戸惑いましたが、ご家庭の食卓を想像するのは勉強になり、料理の幅も広がりました。


ご近所シェフトモ、会員&加盟店、募集中

ご近所シェフトモの使い方や、加盟店一覧など、詳しい情報がわかる公式ホームページです。「近所にまだ加盟店がない」という方は、ぜひおすすめのお店情報を事務局にお寄せください。飲食店さんからのお問い合わせも大歓迎です。みんなでこのサービスを広げていきましょう!
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プロフィール

2006年ライオン(株)入社。営業を経験後マーケティング部門にてNANOX等の商品企画に携わる。19年に社内の新価値創造プログラムNOILに応募したアイデア「ご近所シェフトモ」が事業化テーマとして採択される。20年1月ビジネス開発センターに異動。プライベートでは1児の母。

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