インタビュー
2016/03/03
開設にあたり
106cmの視点だからこそ気づいた、バリアをバリューに変えていくこと。
株式会社ミライロ 代表取締役社長
一般社団法人日本ユニバーサルマナー協会 代表理事
日本財団 パラリンピック サポートセンター 顧問
垣内俊哉氏
歩くことをひたすら夢見た少年時代
少年時代の私の夢は「歩くこと」でした。
骨が弱く折れやすい「骨形成不全症」という病気のため、小学校では骨折を繰り返し、車いすに乗る機会が増えました。
そのころ、車いすはみんなのおもちゃ。
友だちも交代で乗ったりしてましたね。
中学時代のある日、私と友人が掃除をさぼって遊んでいたら、クラスメイトが「とし君は障がい者だから、掃除当番ができなくても仕方ない」と、私だけ免罪に。「自分は障がい者なんだ」と自覚した瞬間でした。
高校は4階建て校舎で教室移動が頻繁にあり、毎日車いすを誰かに運んでもらわなければなりませんでした。
自分が弱く惨めに思え、「歩けるようになればこの状況を変えられる」と、手術を決意し休学。
朝から晩までリハビリに励みましたが、結局歩けるようにはなりませんでした。
車いすの自分に自信を持って胸を張れ
歩けない事実を受け入れられないまま、それでも前に進むため、猛勉強し大学に進学。
車いすでもできるアルバイトを探し、ホームページ制作会社に採用されました。
しかし、任された仕事はなんと外回り営業。
「車いすの兄ちゃん、また来たのか~」と言われながら、3カ月後には営業成績1位を奪取していました。
そして、社長からガツンと激励を受けました。
「歩けないことをいつまでウジウジしてるんだ!営業マンとしてお客さんに覚えてもらえるのは大きな強み。車いすに自信を持て、胸を張れ!」。
この経験を転機に、大学の仲間5人で起業。
バリアフリーのビジネスモデルをつくり、片っ端からビジネスコンテストに応募。
1年間に13の賞を受賞したことで、106cmという車いす目線で発想したアイデアに「価値がある」ことを実感しました。
ハードとハートで 日本の未来が変わる
企業にとってのバリアフリー対策は社会貢献だけでなく、お客さまが増えるという経済効果がなければ継続できません。
海外来訪者も増える20年に向け、日本に求められているのは、より広い視野で考えるユニバーサルデザイン。
障がい者、外国人、高齢者、すべての人にやさしく快適な環境を整えるには、お金も時間もかかります。
金融、行政、サービス業などさまざまな現場で一番多かったのが「障害のあるお客さまに、どう声をかけていいのかわからない」という戸惑いでした。
無関心でもなく過剰でもなく、さりげなく接するために必要な心配り。
それを我々は「ユニバーサルマナー」と名付けました。
ハードはすぐには変えられないけれど、ハートは今すぐ変えられます。思いやりのマナーを知る事で、街で困っている人を見かけたとき、誰もが気軽に声をかけられるようになるはず。「何かお手伝いできることはありますか?」この一言でバリアを解消することができるのです。
プロフィール
1989年愛知県生まれ岐阜県育ち。2012年立命館大学経営学部卒業。10年在学中に株式会社ミライロ設立。11年近畿地区人間力大賞グランプリ、13年みんなの夢AWARD3 グランプリほか受賞多数。ユニバーサルデザインによるコンサルティング、ユニバーサルマナーの普及に尽力。