レポート
2024/02/22
<寄稿>第4回「適応能力や社会性の検査の種類と読み取り方」/「発達障害について学ぼう!」全10回シリーズ
中部学院大学非常勤講師
山内康彦
保護者の皆様が、お子さんの発達に対して最も気になる内容の一つに、“知的能力”があります。知的能力は「知能検査」によってIQやDQといった数値で示されます。しかし、実際生活していくためには、“知的能力”も大切ですが、社会性などの“適応能力”も大切と言われています。
2013年には、アメリカ精神学会がDSM-Ⅴの中で、知的能力の障害の定義を「知的能力障害は、発達期における知的機能と適応機能両面の欠陥を含む障害」と改められました。これを受けて、現在は、障害者手帳(知的な遅れのある人に発行される「療育手帳」)発行にさいして、知能検査だけではなく、適応機能を調べる検査が並行して行われるようになってきています。では、適応機能を調べる検査とは、具体的に何があるのか。一般的には、『ヴァインランドⅡ適応行動尺度』という検査が行われます。
日本ではそれまで、国際基準の適応行動の尺度がないことで、知的障害や発達障害などのある人たちへの支援を提供するうえで、その根拠を示すことができない状況が続いていました。しかし、このヴァインランドⅡ適応行動尺度を導入することで、適応行動という観点で、日常生活の困難さを客観的に把握し、支援のニーズを明らかにすることができるようになったのです。そして、このことによって実際に日常生活で様々な困難を抱える人たちの支援を可能にすることができるようになってきたのです。
ヴァインランドⅡでは、まず、各領域とそれぞれの下位検査について調べます。例えば、『コミュニケーション領域』の中では「受容言語」「表出言語」「読み書き」について調べます。
また、『日常生活スキル領域』では、「身辺自立」「家事」「地域生活」について、そして、『社会性領域』では、「対人関係」「遊びと余暇」「コーピングスキル」について、『運動スキル領域』では、「粗大運動」「微細運動」について等、更に『不適応行動指標』として「内在化問題」と「外在化問題」についても調べます。
知的能力において全体の能力が高くても読み書きが苦手であるといった凸凹があるように、社会性などの適応能力にも凸凹があります。本検査によってお子さんの実態(課題)が明確になり、正しい支援の指針と方向を導き出すことができるのです。
ヴァインランドⅡの日本語版は、0歳~92歳まで、ほとんどの人を対象に実施することができますが、乳幼児から中学生までを対象にした『S-M社会生活能力検査』や0歳1ヶ月から6歳11ヶ月を対象にした『KIDS乳幼児発達スケールTYPE(T)』など、対象となる子どもによって様々な検査があります。
これらの検査が実施できるのは、知能検査と同様に医師や心理師(士)といった有資格者のみです。ご興味のある方は、ぜひ専門機関で尋ねてみてください。必ずお子さんの支援に有効な資料となるはずです。
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中部学院大学非常勤講師
学校心理士SV・ガイダンスカウンセラー
(一般社団法人)障がい児成長支援協会 代表理事・元日本教育保健学会理事山内康彦
1968年3月30日生まれ 岐阜県
専門は特別支援教育と体育。岐阜県の教員を20年務めた後、坂祝町教育委員会で教育課長補佐となり、就学指導委員会や放課後子ども教室等を担当。その後、岐阜大学大学院教育学研究科(教職大学院)で学び、小中高・特別支援学校の専門職修士となる。その後、学校心理士やガイダンスカウンセラーの資格も取得。私立小学校の勤務を経て、現在は(一般社団法人)障がい児成長支援協会の代表理事を勤めながら、学会発表や全国での講演会活動、教職員等への研修講師を積極的に行っている。現場目線で、具体的な解決策を提案する講演会は各地で好評を得ている。2020年3月には、岐阜大学大学院地域科学研究科を修了。本年度、学校心理士スーパーバイザー(SV)資格取得。著書には「特別支援教育って何?(WAVE出版)」「体育指導用教科書(学研)」「特別支援が必要な子の進路の話?(WAVE出版)」等多数あり。