インタビュー

2016/10/10

一人ひとりの「輝き」が他の誰かの希望になる

フォトグラファー

レスリー・キー氏

きっかけは2011年。男性ファッション・カルチャー誌のLGBT特集撮影で、レスリー・キー氏はある人物と出会った。認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表で自らゲイをカミングアウトしている松中 権氏。2人は「LGBTのためにいつか何か一緒に」と暗黙の約束を交わし…。

すべての写真にそれぞれの物語

 去年の春、渋谷区で同性パートナーシップ条例が施行される少し前、権さんからオファーがあった。「日本のLGBTがカミングアウトしやすくなるアイデアない?」って。カミングアウトしたい人がいたら私が撮り、その写真とカミングアウトの物語をWEBで公開させてほしいと提案しました。メッセージを伝えるには100人じゃ足りない1000人撮ろう!1年後45歳になる私にとっても、何かを変えるチャンスだと思いました。

 東京、大阪、名古屋、福岡、仙台。こちらから足を運んで空間を作る、できる限り応募者全員を撮る、
それが基本コンセプト。私だけじゃなくスタジオ、スタイリスト、ヘアメイク、みんなボランティア。1回目に撮影した人が2回目から手伝いに来てくれたり、ファミリーが増えていった。1000人が人生を変えるきっかけを作りたい、シンプルな思いでひとつになりました。

 30年間親に言えなかった人、結婚して奥さんや子どもがいる人。大切な人に本当のことを告げ向き合いたいと決心して来てくれた人。皆に感謝の気持ちを伝えながら撮影しました。会った瞬間の波調で、たくさん会話することもあれば、一つだけ質問することも、目線や手の動きだけで感謝を伝えることもある。彼らの人生の中の大切な時間を、大事に記録しなければいけない。彼らのお父さんやお母さんに、自分の子どもが輝いている姿を見てほしい。しかも一人じゃない、同じ悩みを抱え勇気を出してカミングアウトした人が1000人いて、みんな輝いてる。

 4月5日、私の45歳の誕生日に1000人目の撮影が終わりました。そして私も、今までグレイにしてきた自分のセクシュアリティについて堂々と言おうと思いました。

写真を撮ることは光をとらえること

 23歳で日本に来て、写真学校の学生だったころ日本人の彼女ができて結婚しました。フォトグラファーになってお互いのライフスタイルや価値観が変わり離婚。その後、大きなチャンスがあって、30歳でNYへ。ファッションやアートの世界にはLGBTの人がたくさんいて、すごくきれいでかっこよかった。感性が鋭くて、みんなそれぞれチャーミング、男女のこだわりなく刺激し合い自然にひかれていった。男女の壁を超えたことで、女優さんやモデルさんの悩みや秘密も打ち明けてもらえ、もっと近付けた気がします。今、「セクシュアリティは?」と聞かれたら、私はバイセクシュアルと答えます。男を愛し女も愛す、運が良ければ男にも愛され女にも愛されたい。それを納得してもらうために、いい写真を撮る。

 私にとって写真を撮ることは、光をとらえること。光が全くなければ写真は写らない。その人が持っている勇気や希望が光。その光をその人がどう使うかは自由。自分をもっと輝かせるために使ってくれたらうれしいし、ひょっとしたら他の誰かの勇気や希望になるかもしれない。そのために、最後の息がある限り撮り続けたいと思います。

プロフィール

1971年シンガポール生まれ。94年来日、97年東京ビジュアルアーツ写真学校卒業後、フォトグラファーとしてデビュー。アート、ファッション、広告などを中心に東京、パリ、NY、アジア各地で活躍。昨年3月よりLGBTをはじめとするセクシュアル・マイノリティのカミングアウトを応援するプロジェクト「OUT IN JAPAN」(企画運営/認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ)に参加。2020年までの目標である10,000人撮影の最初の1,000人を4月5日達成。

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