インタビュー

2022/01/29

日本のDiversity&Inclusionをリードする企業を表彰

株式会社JobRainbow 代表取締役CEO

星 賢人さん

国内企業のダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)の取り組みを評価する認定制度『D&I Award』の第1回となる表彰式が20211214日に行われました。主催団体である(株)JobRainbow 代表取締役 星賢人さんがこのアワードに込めた想いと、4部門の大賞受賞企業の取り組みを紹介します。

 

D&Iは特定の少数派だけでなくすべての人に関わるテーマ 

世界は今、大きな転換期にあります。技術の急速な発展により、私たちは世界のあらゆる情報を瞬時に手に入れることができるようになりました。人々の価値観は多様化し、行動様式はより複雑になる中、顧客理解や社員の働き方向上、外部環境の変化に柔軟に対応していく上で、D&Iに企業が取り組むことは、企業戦略でありイノベーションの源泉をつくることにつながります。「誰もが何かのマイノリティ」と考えると、D&Iは特定の少数派だけでなく全ての人に関わるテーマです。

 D&Iアワードは創業当時からの念願でした。障害者雇用、女性活躍推進、LGBT支援などの個々の取り組みを評価する仕組みは既にありますが、本当のダイバーシティを目指すためには、なるべく多くの視点で取り組んでいく必要があると考え5つのテーマで評価認定をしました。そのような点において日本で初めての試みでしたが、そこに共感、ご賛同いただき、全165社、グループ連名も含めますと259もの企業にご参加いただき本当にうれしく思います。さらにうれしかったことは、大企業、中小企業、地方企業、スタートアップ、それぞれの部門ならではのリアルな取り組みをご紹介できたことです。このアワードはD&Iという同じ船に乗る「仲間集め」でもあると思っています。船が向かう先をわかっている仲間が共に進むことで船の推進力は高まります。この船の乗員をどんどん増やしていけたらと思っています。

 

都立産業貿易センター 浜松町館で開催された表彰式にて大賞受賞企業の記念撮影。
(株)メルカリはオンライン参加

 

合計100項目で幅広く評価するダイバーシティスコア

マイノリティ、マジョリティという枠組みを超え、すべての人が生き生きと活躍できる企業づくりの指標としてダイバーシティスコアを策定。「ジェンダーギャップ」「育児/介護」「障害」「多文化共生」「LGBT」の5つの項目を合わせてダイバーシティとし、さらに細分化した合計100項目で、企業のD&Iの取り組みを幅広い尺度で評価。

 

D&I Award 2021レポートはこちら

 

D&IAward2021大賞受賞企業の紹介

 

 

社員とその家族と地域社会を結ぶ

中小企業部門代表 大橋運輸株式会社

 

取締役/鍋嶋洋行さん(左)

総務課CSV・ダイバーシティ推進室

部坂菜津子さん(右)

 1954年創業、社員数101名の愛知県瀬戸市の運輸会社。男性中心の業界において子育て期の女性社員への取り組みから始まり、LGBTQ社員の入社をきっかけに働きやすさをより一層追求。社長自らLGBTQについての知識やサポート方法を学び、全社員に波及。現在は障害者、外国人雇用など、自治体や他企業とも連携し地域社会の変革に貢献。「意識を高めるには知識を高めることが必要。中小の運輸会社でもD&Iはできる」と鍋嶋代表。表彰式でプレゼンテーションを担当した部坂さんも「D&Iは誰にとっても自分事。推進という言葉がなくなるくらい浸透してほしい」と話す。

 

 ドアを叩いてくれるすべての人に応え続ける

地方企業部門 株式会社アンサーノックス

 

代表取締役/渡辺 郁さん(右)

マネージャー/インディカ トシさん(左)

 山梨県甲府市で2008年に創業、人材サービスや家事代行業を展開。社員16人でD&Iの推進に取り組み、子育てや外国人を取りまく社会課題解決に挑んでいる。外国籍マネージャーやシニア採用社員など、多様性のあるスタッフで、地域社会における人材活用のダイバーシティ化に貢献している。スリランカから日本の大学に留学し、卒業後同社に入社したインディカさんは「13年前はコンビニでアルバイトもできなかった」と当時を振り返る。「誰にとっても、働くことは生きること。賞をいただいて終わりではなく今日が新たなスタート」と渡辺代表はさらなる未来を見据える。

 

対話を重視し社員の幸せ度がアップ

大企業部門 積水ハウス株式会社

 

ESG経営推進本部/執行役員

ダイバーシティ推進部長/山田実和さん(左)

ESG経営推進本部/ダイバーシティ推進部

部長/森本泰弘さん(右)

 

 住宅設計施工、都市開発など「住」に関するあらゆる事業を行う同社では、「『わが家』を世界一幸せな場所にする」というビジョンを実現するためには、社員が幸せであることを重視。社員の「多様なチカラによる価値の創造」を実現すべくD&Iを推進してきた。大組織だからこそ「対話」を大切に「社員の幸せ度調査」を実施。「社員の幸せがお客様の幸せにつながると信じ、続けてきた取り組みを評価いただきうれしい」とプレゼンテーションを担当した森本さん。執行役員の山田さんは「今後は他企業や異業種とも連携し、社会全体で取り組んでいきたい」と展望を述べた。

 

社会の差別や不平等を社内で再生産しない

スタートアップ部門 株式会社メルカリ

 

 

DIストラテジーチーム

DIリード/品川瑤子さん

 

 フリーマーケットアプリ「メルカリ」の企画・開発・運用を行う同社は2013年設立。構造化された差別や機会の不平等が社内で再生産されることを防ぐためにD&Iを推進。人事データの可視化と分析により全社員に公平な機会が与えられるよう取り組む。エンジニア育成プログラムの企画・提供など他社と競争ではなく「協奏」することで業界にも変革をもたらしている。DIリードの品川さんは「アワードを通して他社の取り組みに励まされた。今後は取り組むメンバーや経営方針が変わってもD&Iを推進できる人事的仕組みを構築することが課題」と話す。

プロフィール

東京大学大学院情報学環教育部修了。自身もゲイの当事者として、月間60万人がアクセスするLGBT就職情報サイト「ジョブレインボー」を、在学中の2016年に立ち上げる。上場企業を中心に500社以上のダイバーシティコンサルティングを実施。

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