インタビュー

2022/03/08

つらさも幸せも 一人ひとり違う

作家

岸田 奈美さん

 HEART & DESIGN FOR ALLのパートナー企業である株式会社ミライロの広報部長を経て、2020年に作家デビューした岸田奈美さん。昨年30歳を迎え「健康についての考え方が変わった」という岸田さんに、ご自身の心と体の健康について、ご家族について、国際女性デーに思うことなどをお聞きしました。

 

健康に大切なのは心の余裕と安定  

 健康って「病気にかからないこと」だと、ずっと思っていたんです。去年の8月に急性胃腸炎になって、めちゃめちゃ辛い思いをしました。つい最近も高熱が4日ほど続いて本当にしんどかった。でも治るという希望があれば踏ん張れるんだなと思いました。というのも去年の12月にメンタルが落ちた時期があったんです。朝は起きられない、ちょっと外出するだけで疲れてしまう、文章も書けない。「軽度のうつ」と診断されました。日々できていたことがなぜできないのか、この状態がいつまで続くのか、出口のないトンネルのように不安な状態が、本当にきつかった。去年30歳になって、婦人科の先生に「いろいろ体調にも変化が出てくるよ」と言われてはいたんですが、健康でいるためには心の余裕、心の安定が何より大事だということを、この1年で痛感しました。

左から奈美さん、母・ひろ実さん、弟・良太さん

しんどいときに「助けて」と言う練習を 

 会社員だった20代のころは徹夜も平気、そういう働き方が楽しかった。成功体験につながり、達成感も得られました。でもどこかできっとガタが来ますよね。そのときに「バリバリ働けない自分は駄目だ」と思わない方がいい。私は面と向かって人に「助けて」と言えないことがコンプレックスでした。でも文章を書くことで「しんどいこと」を人に伝えられるようになった。伝える方法は人それぞれだと思います。

 例えば、うちの弟はダウン症があり、しゃべることもうまくはありません。でも黙ってしまうことで、出会った人に助けてもらうのがすごく上手。一方、大動脈解離の後遺症で40歳で車いすユーザーになった母は、「人に迷惑をかけてはいけない」という教えで育った世代なので「助けて」と言うのが苦手。でも人としゃべっていると困っていることがなぜか伝わるんです。多分、表情が絶妙なんだと思います。自分なりの方法で「助けて」と言う練習を普段から心掛けることは重要だと思います。いざというときに助けてくれるのは、やはり人なので。

弟・良太さんの1歳の誕生日に

「元気」を守るためには知識と覚悟が必要

 女性特有の差別や悩み、障害のある人やLGBTQの人の悩み、さまざまな違いを「完全に分かり合うこと」はできないと私は思っていて、だからこそお互いに「分からない」ということを知り「教えてほしい」と向き合う、これにつきると思うんです。

 幸せもつらさも人それぞれ、それを表に出すか出さないかも人それぞれです。だから自分のつらさを人と比べることには全く意味がなく、自分がつらいと感じたら「助けて」と言っていい。「助けて」と言われた側は、まず「言ってくれてありがとう」と受け止め、「教えて」と向き合い、そして「一緒に考えよう」と言えたらいいですよね。ただその時に、ある程度知識があったほうが共通言語は増えます。その知識は将来の自分を救ってくれるかもしれません。

 実は、昨年のメンタルの不調は、1カ月300人ペースで自主開催したサイン会が原因だろうと心理カウンセラーの先生に言われました。フリーになって「仕事に穴をあけてはならない」、「読者の方々に元気を届けなければ」と、がむしゃらに突っ走っていたのだと思います。誰かを応援するには自分の元気の残高を守れるだけの「知識と覚悟」が必要なのだと、今ならわかります。

プロフィール

1991年生まれ、兵庫県神戸市出身、関西学院大学人間福祉学部社会起業学科卒業。大学在学中に「バリアをバリューにする」(株)ミライロの企業メンバーとして参加。同社広報部長を経て作家となる。世界経済フォーラム(ダボス会議)グローバルシェイパーズ。Forbesの世界を変える30歳未満の30人「30 UNDER 30 Asia 2021」に選出される。著書に「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」、「傘の差し方がわからない」(小学館)など。

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